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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第五章

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3 灰色の瞳からの感謝。

 アフマドは佐知子の前に立つ。

 会話は聞いていたが、いきなり目の前に現れた男性に戸惑う。しかし、アフマドは片ひざをついてしゃがんでくれた。


「はじめまして、俺はアフマド。確か、母さんと知り合いだと思うんだけど……アイシャっておばさん知ってる?」


 アフマドはにっこりとほほえむ。


 アフマドは近くで見ると、綺麗な顔をしていた。

 ウェーブのかかった髪と、泣きぼくろのせいもあり、色っぽさを漂わせる綺麗な男性だった。

 そんな色気のあるほほえみに、一瞬見惚れるが、ハッと我に返り、佐知子は返事をする。


「あ、はい! あ、アフマドさん!」


 そして、アフマドという名前に聞き覚えがあることを思い出す。そう、アイシャが語った息子の名前だ。


「あ、心当たりある?」

「はい、アイシャさんの息子さんですよね?」

「そうそう、母さんが話した? よろしくね」


 そういうと、アフマドは手を差し出す。


「よろしくお願いします」


 やさしいほほえみに、佐知子も笑顔で手を差し出し、握手する。


「でもって、ヨウの友達でもある。な、ヨウ?」

「あ? ああ……」


 そんな二人を、少しムッとしながら見ていたヨウは、いきなり話をふられ、しかも友達と堂々といわれ、照れくさく、ふいっと横を向きながら返す。


「へへへ、照れてる照れてる」


 そんなヨウを見て、アフマドは、慣れてるかのように笑った。


(そういえば、小さい頃から遊んでたってアイシャさんいってたっけ……)


 二人のやりとりを見ていて、セロといる時とはまた違ったヨウの様子に、佐知子はそんなことを思い出す。


「えっと……サチコちゃん、だっけ?」

「あ、はい」


 アフマドに声をかけられ、アフマドの瞳を見る。佐知子は人と話す時は基本、相手の目を見て話す。


 アフマドの瞳は、黒に近い灰色だった。

 灰色の瞳。また不思議な色の瞳に、注意が行ってしまう。


「ありがとな、ヨウを助けてくれて」

「…………」


 しかし、その言葉で、会話に注意が戻った。


「十年前も、それからもずっと、ヨウの支えになってくれて……」


 アフマドは佐知子の瞳をじっと見つめて、少しほほえみながら、しかし、真剣な瞳でいった。

 研究室が静まり返る。


「おかげでヨウは、こうして元気に強くたくましく育ち、いつの間にか俺なんかよりずっと偉い、立派な副長官になりましたよ」


 ハハハと、アフマドは少し茶化しながらいう。そのおかげでシリアスに張りつめた研究室の空気が緩んだ。


「お前がサボったり怠けたりしすぎなんだ」


 その言葉にうしろからヨウがツッコミを入れた。


「俺は、ほら、出世とかあんまり興味ないから~?」


 立ち上がり、わいわいと話すアフマドとヨウ。


(……アフマドさん……いい人だな……)


 普段はゆるく茶化しているが、ちゃんとするところはして、けれど自分や相手や、周りが気まずくならないように空気を読んで……この一度の会話だけでも、アフマドがどういう人なのか、少しだけわかって、佐知子はアイシャが自慢の息子だというのを納得した。そして、ヨウの友人としても……


「……私というより……アフマドさんがいたから、ヨウはここまでやってこれたんじゃないですか?」


 佐知子はわいわいと話す二人を見て、ほほえましく、少し意地悪だがそんなことをいってみる。


「…………」


 二人は佐知子を見て黙り込んでしまう。


「それはないな~」

「それはない……」


 手をひらひらと顔の前で横にふるアフマドと、横を向き、ぶっきらぼうに言い放つヨウ。ブフッ! と、セロは吹き出した。佐知子も笑う。なんだよ! と、ヨウが少し顔を赤くしながら、またもやめずらしく少し声をあらげる。アフマドはやれやれという風に笑っていた。

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