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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第五章

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1 異世界での生活。

「これ、そっちに運んでー!」

「こっちできたよー!」


 朝、炊事場は調理による熱気と、忙しく動きまわる女性たちで、目が回りそうな戦場だった。


「これ終わった? 持っていくよ!」

「あ、はい!」


 そして、そんな戦場で働きだして数週間。佐知子もまた、毎朝、目が回るような忙しさに追われていた。


「はい、次! これ拭いてー!」

「はい!」


 といっても、次から次へとやってくる食器をひたすら拭くという作業なのだが……。


 炊事場で働き出した初日、何をするのかとドキドキしていた佐知子だが、まかされたのは食器拭きだった。だが、その仕事は決して楽なものではなかった。

 あとから振り返れば、楽な仕事だったと思えるが、調理の熱気と、太陽が昇るにつれて加わる気温の中、約三時間、立ちっぱなしで次から次へとひっきりなしにくる食器や調理器具をひたすら拭くという作業は、バイトをしていた佐知子にしても、楽な仕事ではなかった。



(う~、疲れた……足痛い……)


 仕事が終わり、他の女性たちとぞろぞろと使用人小屋へ戻ってきた佐知子は、持ってきた食事を絨毯の上に置きながら、やっと座れる。と絨毯の上に座った。

 朝番の仕事の女性たちは、仕事が終わってから食事を食べる。もうお腹がペコペコだ。

 まずはコップに入った水を飲む。佐知子は一気に飲み干した。


「はぁー……」


 仕事をしはじめてから知った。水がこんなにもおいしいということを。


(仕事終わりのビールがうまいっていうのがわかる気がする……)


 と、思いながら、佐知子はいつもの質素な朝食に手をつけた。

 正直、眠くて、このあとのいつもの仮眠に早く入りたいが、お腹は空いている。早く食べてしまおうと、佐知子は手と口を動かした。



 十二時の鐘で佐知子は目を覚ます。

 この数週間で、夜明けに起きて仕事をし、仮眠をして昼に起きて昼食を食べるという習慣が身についた。

 そして、昼食を食べたあとは――


 コンコンと、佐知子は木製のドアをノックする。すると中から明るい声で、どうぞー。と、返事が返ってきた。

 扉を開けて中に入ると、相変わらずの散らかり放題の部屋。しかし散らかっているわけではなく、彼なりの分類方法で置いているだけらしい。そしてこの研究室の主、セロが今日も笑顔で迎えてくれる。


「サッちゃん、いらっしゃーい」

「お昼もう食べましたか? 大丈夫ですか?」

「うん! 大丈夫だよ」


 笑顔でセロは答えた。


「今日もアズラク語からやろうか」

「はい」


 昼食のあとの十二時半くらいから三時までは、セロとの勉強時間だ。

 約一時間、佐知子はセロにアズラク語を習い、あとの約一時間、セロが佐知子に日本語を習う。

 そして、その一時間と一時間の間の、約三十分の休憩時間は……


「そろそろかなぁ……」

「そうですね」


 待ちきれない様子のセロに、佐知子はクスリと笑う。

 するとセロが予知したかのように、ちょうど部屋のドアがノックされた。

 返事を待たずにドアが開かれ、入ってきたのは、


「今日も頑張ってるか……」


 右手に銀製の、上部が円形をした筒の取っ手を持ったヨウだった。


「今日も差し入れご苦労! 今日は何かな~!」


 セロの語尾にハートマークがつく。


「ヨウ、いらっしゃい。毎日、ありがとう」

「いや……まぁ……」


 間の三十分もない休憩時間には、毎回、ヨウがお茶とお菓子の差し入れを持ってきてくれる。そして三人で休憩のお茶をしていた。

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