7 国が変われば常識も変わる。
中に入りイスに座ると、まず、佐知子の持ってきた二枚の紙の説明からセロはしてくれた。
セロは二枚の紙を音読してくれる。佐知子は必要な部分はセロに預けたノートとシャープペンシルを返してもらい、メモした。
給金の明細書は、先程、書記官が話した内容を、さらに細かく明記したものだった。
そして当番表は、木・金以外の五日の朝番、時間は夜明けに起きて支度をしてから、朝の七時までだった。仕事が終わらない場合は終わるまで。
「そんな感じかな、書いてある事は。よかったね、木曜と金曜は休みだよ」
「え?」
セロの言葉に、ノートにメモをしていた佐知子は顔を上げる。
「……木曜日と金曜日って、何かあるんですか?」
一週間の間の、中途半端な曜日を休みにされても特に嬉しくないので、疑問に思って佐知子が問うと、
「え? あー……サッちゃんの世界では休みは木金じゃなかったのかな? こっちでも国によって休みは変わるからね~」
セロは、ふふっと笑う。
「え!」
佐知子は驚いて声を上げる。
「ここでは、木金が週末なんですか!?」
「いや、週末ではないよ。週末は土日だけど休みは木金」
「へー……何でですか?」
「ん~? それは一番近い大きな国の国教の影響かなぁ~。まぁ、ハーシムさんがそこの出身だからそうなったとでも言うか……」
「国教……そうだ! この世界のことも教えて貰いたいんでした! もー、わからないことだらけで! 教えてください!!」
まだ時間あるかな! と、佐知子はカンラのポケットから腕時計を取り出し、時間を見る。
時刻は二時過ぎだった。一番、暑い盛りだが、セロの研究室はあまり陽の当らない部屋だったため、蒸し暑くないこの気候ではそれほど暑くない。そして、時間もまだある。
若干、薄暗い、沢山のよく分からない物が溢れたセロの研究室で、佐知子はこの世界のことを聞く。
「う~ん、本当は僕がサッちゃんの世界のことをたくさん聞きたいんだけどねぇ……まぁ、今日はいいか」
サッちゃんが困るからね。と、セロは話し始めた。




