6 セロの研究室へ。
十二時にセロの所に行こうと思った佐知子だったが、十二時に大きな鐘が鳴ると、食事が運ばれてきた。
昼食を終え、何だかんだして向かうのが一時過ぎ位になってしまった佐知子は、炊事場を通ってセロの研究室に向かおうとする。
しかし炊事場は、まだ遅い昼食を取る軍人や役人達の為にせわしなく使用人たちが働いていた。そんな中、通っていいものかと思いながらも、当番表が読めないのは困るので、勇気を出して、邪魔にならないようにそろそろと通った。
しかし、次はもっと大変なことが待っていた。炊事場の扉を出ると、そこは食堂だった。女性も数人いたが、圧倒的に男性。軍人や役人……当然のように、使用人の小娘の佐知子が扉を開けると注目を浴びた。佐知子は急いで歩いて大理石の白い廊下へ続く扉へと向かう。心臓が緊張でドクドクと鳴っているのがわかった。
「はぁー……」
食堂への扉を閉め、背にして右側、目の前にセロの研究室の扉が見えると、佐知子はほっと安堵し、大きなため息が漏れた。
(いつも移動する時はヨウかセロさんがいたからなぁ……)
そんなことを思いながら、佐知子はセロの研究室の扉をノックする。
しかし、返事がない。
(え? うそ。いない!?)
もう一度ノックをする。
しばし待つが返事はない。
そこで佐知子はハッとした。ヨウが眠たそうなセロを連れて出て行ったことを。
(そうか!! 今、寝てるか!)
せっかく、ここまできたのに~!! と、佐知子はその場でしゃがみこむ。
(嘘でしょ!? 戻るの? また来るの? ていうかこの内容わかんないと困るんだけど! どうすれば! いや! いるかもしれない!! いるかもしれない!!)
佐知子はしつこくノックし続けた。もはや拳でドンドンと扉を殴っている状態だ。
「あー!! もう! うるさいなぁ!! 誰だよ!」
すると扉が勢いよく開いた。そして中から機嫌の悪いセロが出てきた。
(いたー!!)
佐知子は心の中で歓喜の声を上げる。
「セロさん!」
「あれ!? サッちゃん!?」
佐知子とセロはお互いを見て、パッと嬉しそうな表情になる。
「よかった~! いたならすぐに出てきてくださいよ~!」
佐知子はまたもや、しゃがみこんだ。
「え? ああ、ごめん~! ちょっと気になること調べてて」
ハハハ。と、セロは悪びれもなく笑う。そんなセロに佐知子は溜息をこぼした。
「あの、書記官の人に当番表とか貰ったんですけど、文字が読めなくて……聞こうと思ったんですけど、今、いいですか?」
立ち上がって、佐知子は問う。
「あ、うん。いいよ。朝の続きもしたいしね」
セロは、ほほえんで迎え入れてくれた。




