3-2 異世界と少年と。
そして、布をめくると――。
「っ――」
強烈な眩しさだった。目が眩むようだった。
這いつくばったまま、片手で布をめくった佐知子の視界に飛び込んできたのは、まず白い光。強烈な太陽の光だ。
「まぶしっ……」
そして顔を顰めながらも、目が慣れて来て瞳に飛び込んできたのは……青い青い、今まで見たことのない色の青の、雲一つない高い空だった――。
「うわぁ……」
佐知子は思わずその空を見て、声をもらす。
そして白く輝く強烈な太陽、黄土色の水気のない、緑の草が一つも生えていない高台の大地、頬をなでる乾いた風。
そこは先程まで佐知子がいた、日本のごくありふれた街とはまるで違う場所だった。
勉強で習った言葉で言うのなら、砂漠地帯とでもいうのか……目の間に広がる見たことも感じたこともない世界と空気に、佐知子が四つん這いになったまましばらく見入っていると、視界の右隅に何かがあることにようやく気づいて、佐知子はそちらを見た。
「…………」
「……わっ!」
そこには、一人の少年がいた。
「び、びっくりした!」
小さな建物の出入口の先は、崩れそうなレンガの二段の階段になっていて、そこの右端に小さな少年が座っていた。
少年は涙を拭ったままのポーズで、涙もそのままに、ぽかんとした表情で佐知子を見ていた。
「……こ、こんにちは」
そんな少年にどうしていいかわからず、佐知子はとりあえず出入口から顔を出したまま会釈をし、愛想笑いをして挨拶をした。
「…………」
少年は手を顔に近づけ、少し怖がりながらじりじりと佐知子と距離を取る。
「あ~……」
佐知子はそんな少年の態度にとりあえず出入口から出て膝の土を払うと、
「あの……ここ座ってもいい?」
と、少年から少し離れたレンガの階段を指さした。
「…………」
少年は無反応でじっと佐知子の様子を伺っている。
「あ~……座るね!」
佐知子は少年に笑顔を向けたまま座った。
そして背中からリュックを下ろし、足元に置くと、横目で少年を見る。
(なんか……凄い子だな……この世界どんな世界なんだろ……不安……)
そう、その少年は、まるで浮浪者の様な、物乞いの様な……みすぼらしい格好をしていた。