表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/267

16 一枚の金貨に込められた想い。

「……悪いな、あいつは面白い研究対象を見つけるとああなってな……」


 廊下の壁に吊るされたランプの灯りの中、ヨウが佐知子に声をかけた。


「あ! ううん! 大丈夫!! セロさんが持っててくれてたほうが安心だし」

「そうか……」


 そこで佐知子は手に持った革袋を思い出す。


「あ! そうだヨウくん! これ! お金貸してくれてありがとう! ごめんね、悪いことしちゃった……助かったんだけど……でも、もう使わないから返すね! なんか大金みたいだし……私、ここのお金の価値わからないから……」


 そういって革袋をヨウに差し出す。


「ああ……いや、それはいい……やる」


 しかし、返ってきた言葉は驚くべきものだった。


「え! いや! 貰えないよ!! 使ったお金も数えてあるから、ちゃんと働いてお給料もらったら返すから!」

「いや、いいから……」

「よくないよ!」


 ヨウは少し困った顔をしている。


「ダメ! お金の貸し借りは人間関係を壊すんだよ!」


 佐知子のその言葉が決め手だったかもしれない。


「……じゃあ……わかった……」


 ヨウは少し、しょぼくれた大型犬のようにしゅんとして、革袋を受けった。しかし、袋の中から金貨を一枚取り出すと、


「でも、これだけは持っていてくれ。いつ何があるかわからないから……稼いだら、返してくれればいいから……」


 そういって、佐知子の手を取り、そっと手のひらにのせた。


「……わかった、ありがとう。失くさないように大切にするね」


 硬貨一枚だけならと、佐知子は受け取った。

 確かに突然、お金が必要になることはある、無一文では心もとない。佐知子は素直に受けることにした。


 それが、アスワド村で流通している硬貨の中で一番価値のある1ディナ金貨だとも知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ