13 セロの部屋。
足どり軽く、るんるんと夜道を歩くセロについていくヨウと佐知子。
炊事場を通り食堂を通り、そしてまたあの、真っ白な大理石の廊下に入って行く。
大理石の廊下は点々と、両脇に等間隔にアズラクランプが吊る下げてあり、色とりどりのガラスを通った光がさまざまな色を放ち、照らしている。
(綺麗……)
歩きながら佐知子がランプを見上げていると、廊下に入ってすぐの、右の部屋へとセロは入って行った。
「入って、入ってー!」
そう言われ、ヨウの後に続いて部屋へと入った佐知子は、中を見てぎょっとした。物の多さに。
部屋は国事部と同じ位だった。
学校の教室、一部屋位はあるだろう。その部屋のいたる所に鉄で作った機械のような物や、謎の文字が書かれた石、標本、骨……色々な物が無造作に置かれていた。
この部屋も簡素なアズラクランプで照らされており、オレンジ色の灯りのせいで余計に不気味な雰囲気がある。魔術師の部屋と言われたら信じてしまいそうだ。
(そういえば、セロさんは何の長官なんだろう……)
先程の使用人小屋での『セロ長官!』という言葉を思い出す。
こんな部屋も与えられているのだし、歳は若く見えるが、偉い人なんだろうなぁ。と、佐知子は思う。
「はいはい、サッちゃんそこ座って。ヨウも」
セロはいつもそこに座っているのであろう、鉄に植物の蔓を編んだ、背もたれのある座り心地のよさそうな椅子に座ると、目の前にごちゃごちゃとある大理石のテーブルの上の物を腕で無理矢理、脇へと押しやり、空間を開けた。そして、取っ手のついた手持ちのアズラクランプを近くに置き、手元を照らす。
佐知子とヨウは黙ったまま並んでセロの向かいの、鉄と綿のクッションでできた丸椅子に座った。
「さぁ! 拝見!」
セロは両手を広げて、顔いっぱい、きらきらと輝かせて言った。




