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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第三章

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12 突然の訪問者。

「髪しっかり乾かしなよー、風邪引くから」


 ライラはタオルで髪を乾かしながら佐知子に言う。


「うん……」

(そっか……ドライヤーないんだよね……明日の朝、髪爆発してるよなぁ……やだなぁ……)


 日本のタオルよりは劣るが、それでも質のいい綿のタオルでセミロングの黒髪をわしゃわしゃと拭きながら、佐知子は少しため息をついた。


 ワックスもスプレーもない。

 櫛と整髪料の油は買ったがそれだけだ。

 だがそれがここの当たり前だ。

 それでなんとかするしかない。


 そう、佐知子がため息をついた時だった。


「こんばんはー! お邪魔するよー! サッちゃんいるー!?」


 その場に似つかわしくない、明るい無邪気な男性の声が響いた。

 皆、硬直して、入口で目隠し替わりの布を手で上げて、満面の笑みで立っている人物を見た。


「セ、セロ長官!」

「セロ様!」


 使用人の女性達も大分帰宅して、人数が増えていた使用人小屋の女性達が突如現れた高官に、叫び声に近い声を上げる。


「セ、セロさん……」

「あ、いたいた! サッちゃーん! あっちの世界の物、見せてよー!!」


 セロはそう言いながらずかずかと使用人小屋へ入ってくる。


「こら!! セロ!! ずかずか入るな!」


 すると、扉の影に隠れていた人物が、小屋に入ってきてセロの首根っこを掴んで止めた。


 それは、ヨウだった。


「ヨウくん……」


 佐知子は何だか久しぶりに見るような気がする顔に、少し瞳を見開く。

 ヨウは佐知子を見ると、視線を泳がし俯いてしまった。


「サッちゃーん! 見せてー!! あっちの世界の物見せてー!! このままじゃ気になって寝れないよー!」


 ヨウに首根っこを掴まれたままジタバタともがき、セロは泣きそうな声で訴える。

 佐知子はハッとした。周りの女性の視線が佐知子に集まっている。

 それもそうだ。新人使用人がなぜ、高官二人と知り合いなのか……しかも向こうから小屋にやって来たのだ。


(まずい……気がする)


 佐知子は立ち上がると、棚から元の世界の物が全て詰まったパンパンのオレンジのリュックを持ち、


「セロさん! 分かりましたからちょっと外に出ましょう!」


 そう言って、慌ただしく外に出ようとする。


 しかしそこで佐知子は、大事な物を思い出し、もう一度、棚に戻ると、奥深くにしまっておいた、ヨウから貰った金の入った革袋を取り出す。そしてもう一度、二人のいる入口へと向かい、革のサンダルを履く。


「見せてくれるの!? やったー!!」


 セロは両手を上げ、瞳をらんらんと輝かせている。


「……すまない……止めはしたんだが聞かなくて……」


 ヨウはため息をついて佐知子に謝った。


「ああ、いいよいいよ、大丈夫。それよりちょっと……早く外に出よう」

「あ? ああ……」


 やったー! やったー!! と騒ぐセロの背中を押して、佐知子は三人で外へ出ようとして、思い出したかのように振り返った。


「あ、ライラ! あたしちょっと出てくるね!」

「あ……うん」


 ライラは呆然としていた。

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