10 ハンムの中。
ハンムは昔ながらの銭湯と似た造りだった。
佐知子はスーパー銭湯には行ったことはあるが、昔ながらの銭湯には行ったことはないので、テレビで見たことのある銭湯と入浴方法しか知らないが、大分似ていた。
ただ、入場料は無料だった。
入口を入ると、さらに男女別の入口へがあり、その先には薄い黄土色のレンガ造りの広い脱衣所が広がっていた。
所々に、先程説明を受けたアズラクランプが吊るしてあったり、置いてあったりし、少し薄暗いが、オリエンタルで幻想的な雰囲気をかもし出している。
脱衣所の中央では中年の女性たちが絨毯の上でクッションを背に、カンラ姿で談笑していた。壁にはレンガで仕切られた棚があり、荷物を入れるようだ。
しかし既にここから、もわっとした蒸し暑さがあるのを佐知子は感じていた。
「タオルと石鹸だけ持って行くんだよ」
ライラは棚に服を脱いで置いていく。
(やっぱり全裸だよね……まぁ、いいけど)
スーパー銭湯や温泉などで抵抗はあまりない。佐知子はそう思いながらカンラを脱ぐ。カンラを畳んでいると視線を感じた。ライラがじっと佐知子を見ている。
「な、何?」
思わず佐知子は問う。
「いや、その下着? めずらしいなーと思って」
「あー……うん、そうかもね……」
案の定の質問に、佐知子は苦笑いして答えた。
健康診断の時にカーシャにも言われたが、今、服を脱いで行くライラを横目で見ていて本当なんだと実感した。
この世界……この村だけなのかどうかはわからないが、本当にブラジャーの替わりに晒を巻いただけ、パンツにいたっては履いていなかった。
佐知子は少し、いや、かなり驚いた。が、元の世界でもそういう国、地域はまだあるしなぁ。と思いながら、別の重大な問題に頭を悩ませていた。
(パンツ……替えないんだよなぁ……どうしよう……ノーパンは辛い……慣れるかな……)
色々と考えながら佐知子はブラジャーとパンツを脱ぐ。
「行こっか」
「うん」
服を脱ぐと、ライラに声をかけられ、二人は扉のない石で出来たアーチの狭い入口を通り、浴場の中へと入った。




