6-1 シャイとバラヴァ。
「ふー、だいぶ時間つかっちまったねぇ。暗くなる前に買い物すまさないといけないのに」
「そうですね」
カンラ屋で、だいぶアイシャとも打ち解けた佐知子。
アイシャは肝っ玉母さんのようなサバサバとしたとてもいい人だとわかった。佐知子は安心できる人をまた一人見つけたと思い安堵する。
「まだまだ買うものはあるからね! 急ぐよ!」
「はい!」
その後、タオルやいい香りのする石鹸、髪をとかす櫛、みんなが履いているような茶色の革のサンダルなど生活に必要な様々な物をスークを歩きながら買いそろえた。
「よっし、こんなもんかね。こっから先は武器やら馬具やら男のもんだからもういいだろう」
スークの端から門のある大通りを通り、三分の二まできたところで、アイシャはそう立ち止まった。
「はい……ありがとうございました」
買い物は楽しいけど疲れる……と、佐知子は少しぐったりとしながら笑顔で答えた。
「よっし! じゃあ、ヨウのお金でちょっと甘いもんでもいただいて帰ろうかね!」
アイシャはふりかえりウインクを佐知子に投げた。
「甘いもの!」
佐知子の顔がパッと輝く。
空がオレンジ色になりかけたころだった。
「よっこいせ! ちょっとー! シャイとバラヴァ二つ頼むよー!」
スークの一角にあるカフェのテラス席に座ると、アイシャは大声で店の中に声をかけた。店の奥からは、はーい! という声が返ってくる。
(シャイとバラヴァ……なんだろう……あれ? ていうか……ぶどうは食べたけど、この世界で食べるはじめての食べ物だ……)
イスに座りながら、佐知子はふと気づいて、ワクワクとしてきた。
「荷物は足の間に置きなよ、盗まれるからね」
「あ、はい」
アイシャの忠告にしたがい、足の間に買った荷物とリュックを挟む。
たくさんの荷物は買い物の途中で買った大きな革のカバンに入れた。買った物はそのまま手渡しされる。ビニール袋など存在しないし、袋などにはほとんど入れてもらえないのだ。
その革の大きなカバンをアイシャと佐知子、ひとつずつ持っている。結構な重さだった。




