5-2 カンラ。
佐知子は店の奥へと入る。
店の奥は茶褐色のレンガで出来た空間で、カンラがたくさん置いてあった。
そして一番奥にある、紐に布がかけられただけの更衣室で着替える。
更衣室の床は絨毯だったので、靴を脱いだ。
脱いだセーラー服はリュックに入れ、真っ白なカンラを頭から被る。
(うわっ……)
カンラは思ったより軽く、かなり涼しかった。着た瞬間に少しひんやりとして、風通しもいい。素材も柔らかく、肌になじむ、そして汗の吸収がいい。この気候に適していた。
(やっぱり、その土地にあった服があるんだなぁ)
佐知子はふと、丈がぴったりなことに気づく。長袖の長さもぴったりだ。店のおばさんすごい……と、密かに思った。
「着替えたかいー?」
せっかちなアイシャに声をかけられる。
「あ、はい!」
布をめくり、表に出た。
「まぁ! いいじゃないかい! 丈も袖もぴったりだし!」
「サイズあったようだね」
二人はほほえんでいた。
「…………」
なんだか気恥ずかしくて、佐知子は、ほほえみながら俯いてしまう。
「じゃあ、同じサイズのをもう一着もらおうか」
「はいよ。お嬢さん、どれがいいかい?」
ずらりと女店主が出してきたのは袖口に刺繍があるタイプや襟元の刺繍が青や黄色、色々な色を使った物、また真っ白で何も模様のない物など様々だった。
「わあ」
服選びはどの世界でも楽しいものだと、佐知子は痛感した。
どれにするね? と、アイシャとあれでもないこれでもないと物色する。
二十分ほどかけて、襟と袖口に様々な色の刺繍のあるカンラを選び、二人はカンラ屋を後にした。




