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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第一章
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2-2 青い水。

(高い買い物をしてしまった……)


 袋はいいです。と駐輪場まで来た佐知子は、左手首につけていた腕時計を外し、右手首につけ、腕輪を左手首につけて木漏れ日の中腕を上げ、光に当てた。


 腕輪はやはり綺麗だった。


 銀色の基板に真っ青な綺麗な石。


 古代オリエンタルさを感じるその腕輪はとても佐知子の好みだった。


(四千円は痛かったけど、まぁ、いっか! 一期一会っていうしね!)


 佐知子は、いい買い物をした! と、にこにこしながら自転車にまたがる。


 木々に覆われた駐輪場を出ると、一気に夏のジリジリとした刺すような眩しい日差しが襲ってきた。佐知子は目を細め、太陽を仰ぎ見る。


 今日も雲一つない快晴、太陽はギラギラと輝き湿度も高く蒸し暑い。

 日本の夏、真っ盛りである。


 駐輪場を出て住宅街を自転車で走りながら、佐知子はふと自転車のハンドルを握っている左手首に目をやった。そこには、先ほど買った銀の腕輪が夏の日差しを受けキラキラと輝いている。


(きれ~だな~)


 暑くて不快だが腕輪を見るだけでにこにことしてしまう。

 いい買い物をした……佐知子は改めて目を閉じ幸せに浸っていると、


「危ない!」


 男の人の叫び声がした。


 その声にパッと目を開いた佐知子の視界に飛び込んできたのは、左から飛び込んでくる自転車の男性。そしてほぼ同時に体に響く、自転車と自転車のぶつかる衝撃、倒れる浮遊感……。


(倒れる!)


 佐知子は地面に叩きつけられる衝撃に備えて目を瞑ろうとした、しかし、その瞬間、


「!」


 一瞬の出来事だったのか、時が止まったのかはわからない。


 左手首につけていた腕輪の青い石がキラキラと光り出したかと思うと、石から青い水が突如、一気に溢れ出した。


 その水はまるで意思があるかの様に、地面に叩きつけられようとしている佐知子を物凄い勢いで包み込む。


「っ!」


 青い水の中はやはり水中と同じで、佐知子は水の中にいる感覚に襲われた。息も出来なければ、目を開けることも出来ない。


 ぎゅっと目を瞑り、まとわりつく水の感覚を感じながら、暗闇の無音のまま佐知子は息を止め、ぎゅっと体を丸めて体を強張らせ、何が起きているのかわからない状態のまま、その水に身をゆだねた。

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