13 大切な人。
「私はヨウを大切な人だと思ってる」
その言葉に、ヨウは瞳を見開く。
「でもね、多分、ヨウは私を……多分……だけど……恋愛感情で好いてくれてると……思うんだけどね……私は、はっきりしないんだ……どんな時も支えてくれるヨウを、私は恋愛感情で好きなのかどうなのまだかわからない……でも、亡くなったら凄く悲しいし辛い。大切で、大事な人だよ……」
そう言って、佐知子は穏やかに微笑む。
ヨウは……
「…………わかった」
一言発し、どこか悲しそうに微笑んだ。
「何か……ごめんね……」
佐知子は頭を下げる。
「サチコが謝る必要はない……今は側にいてくれて、そう想われて、そう言ってもらえるだけで十分だ…………まぁ、他の男といるとイライラするがな」
ヨウはため息を吐く。
「ははは……ねぇ、今更、確認みたいなものなんだけど……ヨウって……恋愛的な意味で……私のこと好きなの……?」
少し恥ずかしかったがはっきりさせようと佐知子が改めて問うと、
「っ……」
ヨウは真っ赤になってしまった。
あ、やっぱりそうなんだ……と、佐知子も頬を赤くしながら戸惑っていると、
「護衛の仕事に就く!」
と、ヨウは少し離れた壁に向かって行き、佐知子に背を向けた。
「え! 護衛はすぐ側にいてくれるじゃないの!?」
佐知子が動揺しつつも突っ込みを入れると、
「サチコ様、シャイで御座います」
静々といつもの無表情でファティマがやってきた。
「あ! ありがとう!」
そうだ! ファティマとミンがいたんだ! と今更、存在を思い出し、真っ赤になりながら少しぬるくなったシャイを受け取る佐知子だった。




