11 自分の知らない顔。
用意された部屋の中はそこまで豪華ではなかったが、高級そうな青い絨毯の上に、三人掛けくらいの木と布で出来た青いソファが奥に、そして手前には数個のクッションがあった。
三人掛けソファと手前のクッションの距離は一メートル以上はあった。
ソファの更に奥には、こちらも青い布で仕切った先に何か色々とあるようだが、初めて来た佐知子には分からない。
「佐知子様は奥の長椅子へお座りください」
部屋に入りしばし立ち尽くしていると、ファティマが佐知子を三人掛けのソファ、もとい長椅子へと促した。
「あ、うん」
佐知子は長椅子に座る。
長椅子は滑らかな生地で気持ちよくふかふかだった。
背もたれのクッションも完全に寄りかかってはいないがきっとふかふかなんだろう……佐知子がそう思っていると、
「謁見中の護衛は一人になる。今日は俺だが明日からは他の奴と交代になる……」
ヨウがやってきた。
「あ、うん、ありがとう」
佐知子が微笑むと、ヨウは身近な人しかわからない少し嬉しそうな表情をした。
「お前らはもう下がれ、扉の前の守りと、謁見人を連れてくるのを頼む……」
他の軍人に言う副長官らしいヨウの姿は、なんだか佐知子には珍しく新鮮だった。
本当に副長官なんだな……と、思っていると、他の軍人達は足を揃え頭を下げ出て行った。




