7 ハーシムとの交渉。
「え……」
「やれるな?」
ハーシムが厳しい視線と口調で佐知子に問う。
「は、はい! がんばります!」
慌てて佐知子が答えると、
「服装はこの間用意したが、お前が着なかった服を着ろ」
「…………」
嫌味っぽく言われたその言葉に、佐知子は一瞬、息を止めた、そして……
「あの……また逆らうようで申し訳ないのですが……私は、セーラー服……私がこの世界に来た時の服の方がいいと思うんです。その姿で村の皆さん、私のこと見てますし……」
今度はハーシムと話し合って決めようと思った。
だからぎゅっと腹部の位置で持った本を握りしめ、佐知子は控えめに言う。
「……お前はまた逆らうのか……」
ハーシムはうんざりした表情で何度目かの重いため息を吐く。
「いや! 逆らうとかではなく! いや、逆らってるんですけど……なんというか……あんまり上品な服を着ると、村の人たちと距離が出来てしまうかと思いまして……」
「神の使いなんだから距離を置け」
間髪入れずに返されたハーシムの言葉に納得しつつも、譲れない自分の意思を伝える佐知子。
「っ~~! ハーシムさんの言う通りなんですが! 私はそういう特別な人間にはなりたくないんです!」
なんと言っていいか分からず、困りながらも、必死に言葉を紡ぐ佐知子。
「神の使いなんだから特別だろう」
ハーシムが怪訝な顔をしながら正論を返す。
「そ、そうなんですが……あ、でも! 違う世界の服着てた方が特別感ありますよ!」
その言葉に、眉間に皺を寄せ、無言で佐知子を見つめるハーシム。
「……今度は……ちゃんとハーシムさんと相談して、許可を得ようと思ったんですが……やっぱり……ダメ……ですかね」
佐知子が俯くと、
「違う世界の人間が、違う世界の服着てたほうが特別感確かに出るんじゃない~? これからもサッちゃんの仕事着はあのせーらーふく? にしなよー! みんな驚くよ!」
シャイのグラスを揺らしながら、突然、セロの声が部屋に響いた。




