6 処罰と新しい仕事。
「……お前の処罰が決まった」
その言葉に佐知子は真顔になり、緊張が全身に走るのが分かった。
「まず反省文をアズラク語で五十枚、それと、ヒラールアルド創造神話の写しもすべて一週間でやれ、それが処罰だ」
「え……」
てっきり村を追放など考えていた佐知子は、思いがけない軽いと思える処罰に声を漏らす。
しかし……
「ほい、創造神話の本とパピス大量に。足りなかったら世話係に言えよ」
黄に渡されたヒラールアルド創造神話の本と、その上に乗せられた大量のパピスを受け取った佐知子は、予想以上の重さで思わず手が下がった。
踏ん張って持ち上げたが、創造神話の本の分厚さに、事の重大さを感じた。
(え? 一週間? 一週間でこれ全部写すの!? しかも反省文、五十枚あるんだよね!?)
両手にずしりと抱えたものを見つめて、佐知子は絶句する。
処罰は村追放よりましだが、結構なものだった。
「なんだ、文句でもあるのか……」
唖然とした表情をしていると、ハーシムにそう問われ、佐知子は首を激しく振りながら、
「いいえ! ありません! あの……ありがとうございます! がんばります!」
と、答えた。
ふー……っと、ハーシムはため息を吐きながら腕組みをして金色の瞳を閉じた、そして再度開く。
「もう一つ、新しいお前の仕事が決まった。お前と母国語で話したいというアーマを中心とした村民から要望があり、明日から毎日、昼の鐘から日没の鐘が鳴るまで、一時間ずつ村民と面会しろ。もちろんこちらで話す者は選ぶ。お前は来た村民と話すだけの簡単な仕事だ、やれるな」
ハーシムから言われたことは、思いもよらないことだった。




