4 やきもち。
「…………」
佐知子はどうしたんだろう……と思いつつも、セロ経由でヨウが自分を恋愛の意味で好きでいるらしいことを思い出し、え? もしかして……やきもち? と思ったが、いやいやいや……と打消し、どうしていいかわからず静かに元の席に座りながら携帯器を置いた。
「…………」
三人の間に気まずい沈黙が流れる。
「あーあ! まったく! 女神様が他の男と少し仲良くなったからって、そんなにやきもち焼くなよ! めんどくさいなー!」
するとセロが両手を背後について顔を上に向けながら、大きな声でめんどくさそうに言う。
「……別に……そんなんじゃ……」
ヨウはまだ不機嫌さのある表情で視線を横に向けた。
「……ふーん……じゃあ俺がサッちゃんにこんなことしてもいいんだー!?」
セロは突然、横からぎゅっと佐知子を抱きしめた。
「!」
セロからはいつぞやの柑橘系のいい香りがした。
佐知子が突然のことに硬直していると、
「…………」
次の瞬間の、ヨウの物凄い目に、二人とも硬直した。
「わー! 怖い! 怖いよー!! 怖すぎだよ!!」
慌ててセロは佐知子から離れる。
「サッちゃん、こんな嫉妬深くて束縛しそうでちょっと病んでる男なんてやめときな?」
セロは聞こえるように佐知子に耳打ちする。
「違う!!」
ヨウは色々なことにストレスが許容量を越えたのか、下を向きながら珍しく大きな声で叫んだ。
「何が違うんだよ! お前、ほんと危ないからな? 少しサッちゃんのことに寛容になったほうがいいからな?」
「うるさい! 俺はもう行く!!」
「あ! 逃げるなよ!!」
「…………」
立ち上がり部屋を去って行こうとするヨウを追いかけるセロ、目の前の、いつもとは少し違う言い方とやり取りに佐知子は呆然としながらも、
「タカハシ様、カップをお持ち致しました」
この状況で冷静なファティマがやってきて、佐知子はファティマをまだ少し呆然としたままで見ながら、
「あ、ありがとう……」
と、つぶやくように言い、二人がバタバタと出ていきミンが静かに閉めた扉を、佐知子はしばらく見つめていた。




