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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第八章

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2 今更、気づいたこと。

「ハーシムさん、すみませんでした」


 深々と佐知子は静かに頭を下げる。


「謝ってすむと思うか」


 いつも眉間に皺を寄せているが、今は逆に真顔のハーシムに恐怖感が増す。


「すむと思っていません……でも、綺麗に着飾って、人の言葉を伝えるのは……何か違うと思って……本当の私を見てもらって、私の心からの言葉を……村の人たちに伝えたくて……こんなことをしました。ファティマやミンやヨウに罪はありません。全部、私が覚悟して決行したことです。罰があるならすべて私が受けます。でも神の使いとして、戦争を……戦を回避することだけはとめないで下さい」


 少し上げていた頭を、再度、佐知子は下げた。


「サッちゃんは正しいことをしたと思うよ。偽りの姿で人の言葉を話しても、それは人の心には届かない」


 セロがいつもと違い、真剣な表情で静かにそう言った。

 お前は黙ってろ。と、言いたかったハーシムだが、たまに見せる真剣なセロの表情とその言葉に、言葉を飲み込んだ。


「……俺も……サチコのしたことはよかったと思う」


 ヨウも静かにそう言う。


「……お前らはこの娘に甘いんだ……こんな勝手なことをするやつを村の外交官になんぞ出来るか」


 ハーシムは深い大きなため息を吐くと、手のひらを顔の半分に当て、目を閉じ眉間に皺を寄せた。

 ぽんっと、黄がハーシムの肩に手を置いた。


「まぁ、起こっちまったことをどうこう言ってもしかたねぇ。嬢ちゃんは確かに勝手なことをした。いろんなもんを裏切った」


 真顔の黄のその言葉に佐知子はドキッとする。


「でも何日も考えて、責任取る覚悟でした行動だ、悔いはないだろ。嬢ちゃんの処罰は俺たちで決める。今日はみんな疲れただろうから、これにて解散、解散」


 黄はいつものように、ニッとおおらかに笑うと、手を振った。


 ハーシム、ほら行くぞ。と黄に促され、ハーシムは佐知子を金色の瞳で去り際にじっと睨み付けるように見ると、黄と共に部屋を出て行った。


「ありゃあ、相当怒ってるね」


 ため息を吐きながらカーシャが近づいてくる。


「しかしあんたも大胆なことしたねぇ、びっくりしたよ」


 ははは。と、腰に手を置いて笑う。


「あたしもよかったと思うよ……まぁ、この村でだけならね。本当に外交官としてやって行きたいのなら、勝手に突っ走っていっちゃダメだよ。一人の勝手な行動で村がなくなるかもしれないんだからね……」


 カーシャは瞳を伏せた。


「…………」


 その表情に佐知子は疑問を持ちながらも、その言葉の重みを感じる。


 一人の勝手な行動で、村がなくなる……。


 やっぱりハーシムさんの言う通りにするべきだったのかな……と佐知子は思うが、違う。と、ぎゅっと手を握った。


(ハーシムさんと、もっと話し合うべきだったんだ……勝手に突っ走らないで話し合って、説得するべきだったんだ。ハーシムさんの意見も取り入れて……それが出来なきゃ外交官になんてなれない……)


 セーラー服の下に、首から革ひもでかけているアフマドの指輪を、佐知子はぎゅっと握った。

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