1 自分のしたことの責任。
その後、村は大騒ぎだった。
正式に神の使いとして公表され喜ぶほぼ信者と化した人たち。
神の使いなんて笑えるな。と笑い話にして終える人たち。
神の使いだなんて代表や高官たちは大丈夫かと、不信感を抱く人たち。
そんな町の人たちをよそに貴賓室へと戻った佐知子たち。
ヨウに支えられ布をかぶり貴賓室に戻ってきた佐知子は、もう泣き止んではいたが泣いたせいでぼうっとした頭で先程の、自分が演説をした後の村の人々の反応を思い出していた。
パタンと扉が閉まると、
「何故、あんなことをした」
ハーシムの静かな低い声が部屋に響いた。
その声に、ついてきた長官、副長官、タカヤなどが息をひそめハーシムを見た。
佐知子はその言葉に肩に力が入り、恐怖感に襲われる。
怒られる。
そう思った。
逃げ出したいと瞬時に心にわいた。
しかしこれは自分が考えて行動した結果だ。
責任は……取らなくてはならない。
逃げられないし、怒られて当然のことをしたのだ。
用意した衣装もスピーチ内容もその衣装代も、佐知子のために割いてくれたハーシムやファティマ、ミンの労力も時間も手間もすべて無駄にした。
特に、わざわざ仕事が忙しい合間を見て、色々教えてくれたハーシムには申し訳なく思った。
全部を無駄にしたのだ。
裏切ったと言ってもいいかもしれない。
佐知子は怖かった。
体がこわばっているのがわかる。
泣きそうだった。
それでも、それでも言わなければいけない、伝えなければいけない。
佐知子はそっとヨウの脇から離れると、布をスルリと手に持ち、涙目でハーシムの金色の瞳を見つめた。




