6-2 紹介。
「えっと……俺が頻繁にギドに行ってることは知ってると思うけど……今日も……丘の上のギドに行ったんだ……」
太陽の光が窓格子越しに差し込み、床に格子状に影をつくる静かになった部屋で、佐知子を傍らに、ヨウは六人に見つめられながら話し始めた。
「そしたら、ギドの中からこの方が出てきて……」
(あの建物、ギドって言うんだ……)
ヨウの話の合間に、佐知子は新しい知識を得る。
「姿かたちも、持ってる物も……何もかも十年前、おっさんが俺を拾ってくれる前に出会った……俺が……俺を救ってくれた神様だと思ってた……タカハシサチコって人と同じで……名前を聞いたら……本当にタカハシサチコ……様で……で、この国の創造神から、これから起こる大戦争を止めるように、違う世界からこの世界へ使わされたらしい……だから……ここに置いてくれないかな? きっと何かの役にたつと思うんだ! ほら、この村も戦ばかりだし……」
(ちょ、え……? 神様? ……戦……? 戦争……?)
ヨウの説明を聞いていて、驚くことばかりで佐知子は硬直してしまう。
「突飛な話だな……」
ハーシムは眉間をおさえてため息をつく。
「でも、言ってることは本当だろうなぁ」
黄はテーブルに肘をつき、手の平に顎をのせ、にやついていた。
「ねぇ! どうやってこの世界にきたの!? 違う世界ってどんな世界!!」
セロは瞳を輝かせて立ち上がった。
「セーロ! それはあと! ……まぁ、いいんじゃないの? あたしはどっちでもかまわないよ。トトは?」
カーシャは両手を広げている。
「俺は……別に……」
トトという名らしいアフリカ系の男性は、無表情のままそう言って、ごほっと咳をした。
皆はハーシムを見た。
「……まぁ、黄とヨウがそう言うのであれば嘘ではないのだろう……神の使いというのは……にわかには信じられんが……まぁ……黄とヨウの知り合いなら、軍用地の炊事場で働く使用人として雇うくらいなら特に問題はない……それでいいか」
ハーシムは再度、ため息をついた。
「ありがとう! ハーシムさん……」
「あんな嬉しそうなヨウ見たの数年ぶり……」
セロと黄は、にししと笑っている。
(ここで……働くことになったのかな……?)
よかったんだか悪かったんだか……何だか緊張したなぁ……と、佐知子はほっと息をついた。
「まぁ……まずはその格好を何とかしてからだがな」
しかし、ハーシムにじろりと睨まれ、ひっと佐知子はその場で肩をすくめたのだった。




