2 言われた通りか自分の意思か。
翌日。
「言語道断だ! ふざけているのか!!」
珍しくハーシムが声を荒げた。
貴賓室に来たハーシムは、不機嫌極まりない表情をしている。
「やっぱり……服はセーラー服で、スピーチの内容は私の言いたいことじゃ……ダメですかね……」
そう、佐知子は昨晩ふかふかの天蓋付きベッドで考えた。
自分が神の使いなのだから、用意された衣装で、用意された原稿を読むのは違うのではないかと。
では、娼婦と間違われる服で、稚拙な自分のスピーチをして、受け入れられるかと問われれば自信はなかったが、心に思うことは確固としてある。
自分のこの想いを伝えたい。
と、ハーシムに提案したのだが……
「あんな娼婦の様な服で出て行ったら威厳も何もないだろう!」
まずハーシムに服装のことを言われた。
「でも……あの服は私が異世界から来た……神の使いの証のようなものですし……」
睨まれ怖いが、おずおずと、しかし腹部に力を入れ、佐知子は伝えたいことを伝えていく。
ヨウやセロに言われた言葉を思い出して……。
「スピーチは何を言うつもりだ。お前の稚拙な言葉じゃ誰も納得させられんだろう」
いつもより深く、ハーシムは眉間の皺を寄せる。
「そうかもしれませんが……」
「『そうかも』ではない。そうなのだ。いいか、私の用意した服を着て、私の用意したスピーチをしろ。わかったな」
「…………はい」
言葉を飲んだ佐知子を見て、一つ息をつくとハーシムは出て行った。
佐知子は大きなため息をつく。
「…………」
しかし佐知子は……セーラー服を見つめ、固く決心していた。




