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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第六章

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14 ハーシムのスパルタ指導とその後。

「次は歩き方だ。そのまま足を滑らせるように、静かに音を立てず歩け」

「!」


(そんな忍者みたいな歩き方できないよ!)


 と、思いつつも、やるしかないので佐知子は足を一歩、踏み出す。


「違う、もう一度だ」


 冷たいハーシムの声がすかさず飛んできた。

 うぅ……と顔を少し歪ませる佐知子、が、


「感情を顔に出すなと言ったばかりだろう……顔は優雅に微笑んだままだ」

「はい!」


 こうしてハーシムのスパルタ指導は一時間ほど続いた。


「そろそろ時間だな、私は仕事に戻る。ファティマ、後は任せたぞ」

「かしこまりました」


 部屋を出て行くハーシムに、ファティマとミンは扉まで行き頭を下げながらハーシムを見送った。


 一方、佐知子は床に膝と両手をついて荒い息をしていた。


(無理無理無理! これ明日、全身筋肉痛だから!)


 何とか這いつくばりクッションにもたれ掛かる。体中が辛い。


「サチコ様、お茶をお入れしますか?」


 するとファティマが声をかけてくれた。


(え、優しい……)


 佐知子は涙が出そうになりつつ、お願いします……と、小さな声で言うと、ファティマは部屋の奥へと消えて行った。


 側にはミンが立っている……話しかけようか悩む佐知子。

 カジャールのことが脳裏に浮かび、何となく躊躇う。


「ねぇ……ミンさん……」

「ミンでけっこうです」


 勇気を出して話しかけると、佐知子に顔を向け、無表情と堅い口調で返された。


「……いや、私はミンさんって呼びます。呼び捨ては嫌です……」


 佐知子はクッションにうつ伏せになりながら、顔だけをミンに向けて小声で言う。


「……お好きなように」


 ミンは瞳をほんの少し、いつもより大きく開いたあと、いつもの無表情に戻った。


「ミンさん、ずっとその姿勢で疲れない?」

「疲れません」


 素っ気ない返事が返ってくる。


「……ミンさん、年いくつ? 近いよね?」

「……十六でございます」


 その返事に、あ、やっぱり! と、佐知子は表情を明るくする。


「私、十七なんだ! やっぱり近いね!」


 しかし、


「ハーシム様の年の近い使用人がいた方がいいとのお気遣いで、私が使用人に任命されました」

「…………」


 その言葉に佐知子は言葉を詰まらせる。


「……そっか」


 そして顔をクッションに埋めた。


(ハーシムさん……冷たい厳しい人のように思えるけど、気使ってくれてるんだな……案外、優しい人なのかも……多分、さっきも私のため……に、仕事の時間さいて来てくれたんだし……)


 そう考えているとカチャカチャと、静かな部屋にほんのわずかな食器の音が響き、佐知子が顔を上げるとファティマが静かにシャイを運んできてくれていた。

 ファティマはお待たせいたしました。と、シャイやお菓子を絨毯の上に置くと、ミンの隣に立つ。


「…………」


 体を起き上がらせた佐知子はしばし考え、側に立っている二人に……


「……一緒にシャイ飲みませんか?」


 と、問う。

 しかし、


「申し訳ございませんが、ご遠慮いたします」

「私もご遠慮いたします」


 という返事を二人に返された。


 佐知子は、まぁ、そうだよね。と肩を落とした。

 仲良くしたいんだけどな……と、思いながら。

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