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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第六章

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13 忙しい合間をぬって。

「そろそろハーシム様がお越しになられる時間です」


 三人でその後も他愛のない話しをしていると、ファティマが静々とやってきた。


「あー! もうお開きかー!」


 名残惜しそうにセロはボスンとクッションにもたれかかった。


「仕方ないだろ、ほら行くぞ。サチコ、またな」


 ヨウは佐知子に薄く微笑みかける。


「うん! ありがとう! 楽しかった! セロさんもありがとうございます!」


 ヨウとヨウに引っ張られながらセロが立ち上がったので、佐知子も立ち上がり礼を言う。

 そして、扉の前まで行くと、


「じゃあな」

「またね~! サッちゃーん!」

「また!」


 と、片手を上げて佐知子は二人に別れを告げた。

 そして扉がミンによって閉められる。

 ふぅっと、佐知子は息をついた。

 そして先ほどの言葉を思い出す。


『サチコはサチコらしくしていればいい……』


(うん……私は私らしくいよう……)


 と、思っていると、コンコンとノック音がした。

 ミンがドアを開けると、


「娘、指導を始めるぞ」

「!」


 ハーシムがやってきた。


 先程までの和やかな気持ちから一転、佐知子は一気に緊張する。


「はい! よろしくお願いします!」


 しかし腹部に力を入れ、扉の前でハーシムに頭を下げた。


「……頭を下げるな、下げるなら軽くだ」

「あ、はい……」


 早速、指導が入る。


 ハーシムが黙って部屋の中央まで歩いていくので、慌てて佐知子もその後について行く。

 ファティマとミンがティーセットを片付けるのをチラと見てから、立ったままハーシムは佐知子に振り返り、


「まずは姿勢からだ」


 と、指導に入った。



「背筋は伸ばし、顎を軽く引く。手は腹部で軽く重ね、足は左足を少し下げる」

「はい!」


 言われたことを早速やってみた佐知子だが……


「顎を引きすぎだ」

「はい……」

「手の位置はもう少し低く」

「はい……」

「背筋もっと伸びんのか」

「はい…………」


 何度も注意され、


「まぁ……今日はそれでいいだろう」


 と、やっと言われた立ち姿は……


(ちょ……ずっとこれ維持するの!? 全身辛いし、体中ピクピクしてるんだけど! 無理がある!)


 佐知子にとっては拷問のような立ち方に、心の中で叫び声を上げていた。


「顔に感情が出ているぞ、辛いのはわかるが顔は優雅に微笑め。あと体の力を抜け。特に肩」

「!」


 ハーシムは隙なく見ている。

 恐ろしい……一分の油断も見せられない……と、佐知子は神の使いとしての公表を望んだのを、少し、ほんの少し後悔した。


 しかし、その気持ちに自分で気付くと、いけないいけない! と、気持ちを引き締めた。


(私にはやることが……やりたいことがあるんだ!)


 と、思いなおすと、言われた通りにほんの少し、優雅はこんな感じだろうか……と思いながら肩の力を抜き微笑んだ。


「……立ち方はそれが基本だ。ファティマ、覚えたか?」


 ハーシムはファティマになぜか問う。


「はい、ハーシム様」


 ファティマは頭を丁寧に下げ、答えた。


「私が来れる時間も限られているからな……いない間はファティマに習え」

「あ、はい……」


 その言葉に、ハーシムはあの忙しい仕事の合間をぬって来てくれてるんだな……ということに、佐知子は今更、気がついた。


(がんばらなきゃ……)


 佐知子は一人、そう思う。

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