11 ふかふかのクッション。
「じゃあな」
ハーシムは要件を言い終わるといつもの早足で部屋から去って行く。
ファティマは開いた扉を静かに閉めた。
そして佐知子はある疑問をセロとヨウに問う。
「……どうして三日月の日なんですか?」
「……それ……」
「それはね!」
ヨウが説明しようとしたのを、セロが遮って話し始めようとした時、
「セロ様、ヨウ様、どうぞお座りになってください」
と、ファティマが来て三人に告げた。
「そーだね! 座って話そうか!」
部屋の中央にある絨毯の上にセロは上がり、クッションにボスンともたれかかった。
「わー! ふっかふか! 早く二人もおいでよ!」
相変わらず自由だなぁ……と、佐知子は呆れ顔で思う。
「タカハシ様、ハーシム様とのお勉強まであと一時間十五分ほどありますが、お茶とお茶菓子をご用意いたしますか?」
ヨウとサチコが立ち尽くしてセロを眺めていると、ファティマがそう声をかけてきた。
「え、あ、ありがとう! お願いし……お願い」
ぎこちない言葉と笑顔で佐知子は答えた。
そしてヨウに座ろう。と声をかけ、二人も絨毯の上に座った。
「わぁ! クッションふかふか!!」
横座りをして沢山の背もたれになっているクッションに寄りかかると、セロと同じことを言いながら少し身体を弾ませる佐知子。
「いいクッションだよねー! さすが貴賓室!」
そして佐知子以上にボフンボフンとクッションに身体を弾ませるセロ。
「おい……」
胡坐で座り、ヨウはそんな二人を呆れ気味に見つめた。
「ヨウもやりなよー! ふっかふかだよ!」
佐知子はヨウの呆れた視線に恥ずかしくなり止めたが、セロはまだボスンボスンとやっている。
「やらん。それより三日月の日の説明しないとだろ」
冷静なヨウ。
「まったく、みんな日常を楽しむ心がなくてやんなっちゃうよ」
ため息をつきながら、クッションに大きくボスンと寄りかかり、セロは話し始めた。




