6 羞恥のハンム上がり。
「っ……」
その後、濡れた身体を羞恥心に耐えながらファティマに拭かれていると、
「それではタカハシ様、大理石の上にうつ伏せになっていただけますでしょうか」
「え! ……このまま……裸で?」
聞き返してしまう佐知子。
「はい、これからオイルなどを塗りマッサージもいたしますので」
ファティマは真顔で答える。
「……うん、わかった」
(オイルとかマッサージとか……まぁ、これも神の使いだから……早く慣れないとな……てか、この白い石やっぱり大理石だったのか……もしかして会議室とか他の白い石も全部大理石なのかな……)
佐知子の背丈ではだいぶ余るくらいの長方形の大理石の上にうつ伏せになりつつ、佐知子は色々なことに思考を巡らす。
(あ、あったかい……)
大理石はほんのりと温かかった。
どういう仕組みなんだろう……と、佐知子が思っていると、
「うわぁ!」
背中にぬめりとした感触を感じ思わず叫んでしまう。
「……申し訳ございません、バラのオイルを塗らせていただいたのですが……冷たかったでしょうか……」
手を離して頭を下げるファティマ。
「……あ、いや……びっくりしただけだから! 大丈夫!」
佐知子が気にしないで! と笑顔で答えると、
「では、全身に塗りますので冷たいようでしたらおっしゃってください」
「え!?」
ファティマの言葉に、佐知子は再度叫ぶ。
(確かバラのオイルって高かったはず……いや、そうじゃなくて全身に塗るの? え、全身に塗られるの……?)
これから行われる行為を考えて、恥ずかしさで顔を真っ赤に佐知子がしていると、
「……バラのオイルは美肌効果がありますので……高貴な方は使われています。ハンム後に召使いが全身に塗らせて頂くのが通常かと……」
「ありがとう……」
少し遠回しなファティマの『神の使いとしての心構え』を伝えられ、佐知子は静かにうつ伏せで瞳を閉じて顔を伏せた。
しかしそれでも全裸で全身にオイルを塗られる恥ずかしさはある。
そんな羞恥心に必死に耐える。
(これは偉い人は皆やってること……私も神の使いなんだから……あ……でも気持ちいいかも……)
お風呂上がりにマッサージなんて最高だな……と、良い香りのする中、佐知子はついうとうととしてしまう。
「タカハシ様、仰向けになって頂けますでしょうか……」
「!」
うっかり佐知子は寝てしまい、気づいたら背面のオイルマッサージは終わっていた。
「あ、ありがとう、ごめんなさ……ごめん、寝てた」
「感謝と謝罪は無用です。お体を仰向けにして頂けますか?」
「…………」
少し戸惑ったが、羞恥心に必死に耐えながら佐知子は体を反転させる。
佐知子がぎゅっと目を瞑っていると、そっと下半身に白い布がかけられた。
そしてファティマは無表情で上半身にオイルを塗っていく……手慣れたものである。
(もうこうやって何人ものお偉いさん相手してるんだもんね……取り越し苦労というか何と言うか……恥ずかしいのは私だけか……)
ファティマに任せていればいいのか……そう思いながら、佐知子はどうとでもなれ。と、気持ちよさに身を任せそっと再度、瞳を閉じた。




