3 神の使いとしての自覚。
「それではタカハシ様、荷物の整理はミンが行いますので、私がお世話致しますのでこれからご入浴して頂きますが、問題は御座いませんでしょうか」
ファティマは佐知子と目を合わさずに、伏し目がちに言う。
「あ、はい! あ、でも荷物は自分で片づけたいんですが……」
躊躇いながら佐知子が主張すると、
「……そのような雑務は世話係の仕事ですので……」
「…………」
ファティマの表情と言い方に『あなたは神の使いなんですよ? 自覚を持ってください』と、遠回しに言われているような気がして、佐知子は一瞬、硬直する。
(そうだな……もうこの部屋に入ってから、いや、入る前から、会議室でハーシムさんに言われた時から、私は神の使い扱い……いや、神の使いなんだ……)
佐知子はそう思うと、すっと息を吸った。
「はい、わかりました」
そして軽く微笑んでファティマに答える。
「……それではこちらに。専用のハンムが御座いますので」
「え!……あ、はい……」
専用のハンムなんてあるんですか!? と佐知子は大声を出しそうになったが、神の使いというストッパーがそれをつぐませ何とか冷静に返事をする。
「それではミン、タカハシ様のお荷物頼みましたよ」
ファティマがミンに声をかけると、
「はい、お任せください」
ミンは、頭を下げた。
「それではタカハシ様、参りましょう」
「はい!」
二人は入口の左手にある部屋へと入って行った。




