5 意外な発言。
馬に乗ってしばらく行くと、役人宿舎に着いた。
「ヨウも入れるかな?」
馬を下りた佐知子が問うと、
「もう出るんだから何言われても平気だろ。後で出て行ったのかと思われるだけだろうし……一応、俺も軍事部の副長官だしな……文句は言えまい」
ヨウには珍しく権力のことを言ったので、佐知子は少し驚きつつ、私って結構凄い人たちと普通に接してるのかな……と思いながら、ヨウが馬を繋ぐのを待ち扉をノックした。
門番の老人が扉を開いて出てくる。
「あ、おじいさん。あの、今日でここから引っ越すことになったので、荷物持ちでこちらの……ヨウ副長官も入っていいでしょうか? ハーシムさ……長官の許可は取ってますので」
佐知子が老人に聞くと、にこにこしながら頷いた。
ありがとうございます。と言い、二人は中へと入る。
この時間は役人は皆、仕事に行っている為、広間には誰もいなかった。
「よかったー、誰もいない。早く荷物運んじゃお」
「ああ」
二人は佐知子の……佐知子とカジャールの部屋へ行く。
鍵で部屋の扉を開けると、当たり前だがカジャールも誰もいなかった。
扉を閉めて、
「荷物まとめるから待っててね!」
と、佐知子が慌てながら言うと、
「手伝うか?」
と、ヨウが問うが……
「いや……見られたくない物もあるし……」
苦笑して佐知子は断った。
「あ……すまない……」
ヨウは顔を伏せる。
「立って待たせてごめんね、早めにすますから」
佐知子はふふっと笑い荷物をまとめ始める。
「いや、気にするな、ゆっくりでいい」
下を向きながら、ヨウは待っていてくれた。




