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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第一部 第二章

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5 金色の瞳のハーシム。

 何故、あの人はあんなにぎょっとしていたんだろう。と、佐知子は思う。


(服装が珍しいのかな……まぁ、確かになぁ……セーラー服……違う世界の服だしなぁ……)


 佐知子は考えながらヨウの後について歩いていると、ヨウは色々な人に、おかえりですか? お疲れ様です。など声をかけられながら歩いていく。


(そういえば、さっきから副長官て呼ばれてるし……ヨウくん……もしかしなくても偉い人……?)


 え、そんなに出世したの? どうしよう、こっちが敬語で様つけなきゃいけなかったかも……と、佐知子が焦りを抱いていると、大人数が顔を洗ったり水を飲める流しっぱなしの水道がたくさんついた水場らしき場所を通り抜け、二つの木製の扉の右側へ入る。


 すると真っ白な壁、白い高い天井の、白い長い廊下が現れた。


 それは大理石で出来た廊下だった。


 真っ直ぐな一本の廊下の両側に、綺麗に等間隔に木製の扉がある。

 ヨウはカツカツと白い綺麗な廊下を歩いて行く。


 佐知子が今まで見たこの世界の建物は茶褐色か薄い黄土色のレンガだった。

 扉は鉄か木か布。

 だが、ここは床も壁も天井も一面真っ白で大理石だ。


(凄い……綺麗……)


 佐知子は突然現れたそんな白い美しい空間をきょろきょろと見ながら感嘆の息を漏らす。


 そんな佐知子を連れ、ヨウは黙って一番奥の右側の扉の前で立ち止まった。


「まだこの時間なら会議してるはずなんだが……間に合ったかな……」


 ヨウは独り言を木製の扉の前で呟いた。


「…………」


 綺麗な空間を眺めていた佐知子はそんなヨウの言葉を聞いてまたもや焦り出して来た。


 先程の『長官たちに会わせる』の言葉。


 一体、何をする、言うつもりなのだろう。

 自分はただ住む場所と仕事を貰いたいだけなのだが……。


 佐知子がぎゅっと頭から被った布を首元で握っていると、木製の扉の向こうでガタガタと音がした。


 そして扉がギィっと開く。


「あ、ハーシムさん……ちょっと話が……皆にも……」

「ん? 何だヨウ。どうしたんだ…………その後ろの娘は何だ」


 真っ先に出てきた金色の瞳をした男性に睨まれた。


 『ハーシム』とヨウが呼んだ男性は、ヨウより背は低く幾分華奢に見えたが、平均的な成人男性の体格だった。


 褐色肌で年の頃は三十代後半と言った所だろうか。


 白いワンピースの様な服を着て黒髪短髪の髪に白いスカーフを巻き、スカーフの上に青や赤の色とりどりの宝石の付いた綺麗な装身具をシャラシャラと付けて革のサンダルを履いていた。


 そして何より印象的なのが金色の切れ長の瞳だった。


 金色の瞳に佐知子は一瞬魅入るが、すぐにそのキツい眼差しに目をそらす。


(この人、絶対性格きつい……)


 性格は顔に出る。絶対きつい。

 佐知子はそう思った。


 そんな男性に睨まれたのだ。硬直してしまう。


 そして気になったのが、斜め後ろに極東アジア系の少年を連れていたことだ。


 しかし、次の瞬間、


「おー! 何だ! ヨウが女連れて来たのか!?」

「えー! ほんとに!! ほんとに!?」


 大きな明るい声が聞こえ、佐知子は驚いて少し顔を上げた。


「…………」


 その瞬間、ハーシムと呼ばれる男性を突き飛ばして出てきた二人を見て佐知子はきょとんとしてしまう。


 一人は見覚えのある極東アジア系の男性。

 もう一人は白人の金髪碧眼の若い男性だった。


「何か布被っててよく見えねぇな!」

「わー! ほんとだ! ほんとだ!! 君いくつ? どこでヨウと知り合ったの? よくこんな堅物に口説かれたねー!!」

「口説いてない! いいからおっさんとセロは黙ってろ! あ、いや、おっさんには証人になってもらわねぇと……」


 『おっさん』と『セロ』と呼ばれる二人が、佐知子に接近するのを前に立ち必死に食いとめながら、ヨウはハッとしたようにそう言う。


 そうこうしていると、


「……貴様ら……いいから一旦部屋へ戻れ! 席へつけ!」


 突き飛ばされ壁へ激突したハーシムに少年が、ハーシム様! 大丈夫ですか!? と声をかけると、ハーシムはゆらりと体勢を立て直し一喝した。


 その言葉でおっさんとセロと呼ばれる二人は笑いながら部屋へと戻って行く。


「はぁ……話は中で聞く。娘、お前も中へ入れ」


 金色の瞳のハーシムに睨まれながら、佐知子はおずおずとヨウの後について部屋の中へと入ったのだった。

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