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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第四章

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24 自分のための努力を。

「今日はありがとうござました! ハンカチ、また洗って返しますね!」


 トトとカーシャの家の門前で、佐知子はハンカチを握りながら苦笑する。


「ああ……うん、いつでも来て…………」


 薄くトトは笑った。


「……送っていくよ……もう、薄暗いし……待ってて……今、鍵を……」


 鍵を取りに行こうとしたトトへ、佐知子は慌てて、


「ああ! いいです! いいです! また副長官という高官に送ってもらっちゃうと、役人宿舎でぐだぐだ言われちゃいますから」


 と、笑って眉を寄せる。


「そう……」


 少し残念そうな表情を見せるトト。


「それじゃあ、本当にありがとうございました! またお茶飲みにこさせていただきます!」


 深々とお辞儀をすると、佐知子は清々しい表情でトトの家を去って行った。

 トトはそんな佐知子の背中を、夕暮れの空の元、ほんのりほほえみながら見つめていた。



(あー!すっきりしたー!)


 薄暗くなったオレンジと、濃いブルーの入り混じった空を見上げ、佐知子は大きく息を吸い、吐きながら心の中で叫ぶ。


「トトさんはいい人だな……最初、何の印象もなくて……ちょっと怖かったけど……」


(皆は変人って言うけど……皆、トトさんのことちゃんと知らないだけだよな、きっと)


 独り言を発しながら先程までのトトとのことを考えつつ、佐知子は空を見上げ、笑顔で役人宿舎へと帰宅する。


 門番の老人に、戻りました。と挨拶をして、佐知子は部屋へと向かう。

 鍵を開け、扉を開くと、中にはカジャールがいて、ランプをつけ勉強をしているようだった。


 佐知子は言うか言うまいか一瞬、躊躇いつつ、暗い表情で控え目に小声を発する。


「……ただいま」

「…………」


 その言葉に返事はなかった。

 カジャールは黙々と机に向かっている。


 佐知子は少しうつむくが、さっきのトトの言葉を思い出す。


(分かり合えない人もいる……んだよね。もう気にしない! 私は私のことをしよう……戦を失くすための努力を……)


 顔を上げ、佐知子は自分の机に向かいランプをつけ、カバンの中身を片づけた。

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