23 トトの最後のアドバイス。
「はぁ……愚痴って泣いたらすっきりしちゃいました! トトさんにアドバイスももらえたし! すみません! ありがとうございました!」
一転、明るい笑顔をすると佐知子は頭を下げる。が、
「……うん……あとね」
「はい?」
トトはまだ何かを言おうとした。
「人に期待するのはよくないよ……怒りが沸くのは…………多分、相手が自分の期待通りになってくれないからだと思う……から……」
「…………」
真顔で佐知子は黙り込む。
「仲良くしたいのに、どうしてこの人は私の思った通りに仲良くしてくれないの? っていう気持ちで悲しくなったりイライラしてるんだと……話を聞いて思って…………相手には相手の気持ちがあるから、相手の気持ちをコントロールすることはできないから……コントロールできないものに悩んで時間をかけるより、コントロールできること、自分のことに力を注いだ方がいいよ……ああ、この人はこういう考え方なんだな。って割り切るとか……まぁ……結局、さっき言った最低限の関わりですます……ってことになるんだけど……」
「…………」
真顔で伝えてくるトトの言葉に佐知子は何も言えなかった。ただ唖然としていた。
認めたくはない……が、確かにそうかもしれない……と、佐知子は考える。
自分が正しくて、自分の思った通りにならないから、自分は怒ったり悲しくなったり……でもそれは相手の気持ち……自分ではコントロールできないことだ……しかも話し合いも拒絶された……。
「トトさんって……いくつですか?」
「え……二十六だけど…………」
二十六……佐知子は自分と十歳くらいしか変わらないのに、こんな達観したような考え方をするトトを、何だか尊敬すらしてきた。
「そうですか…………何か……トトさん…………凄いですね……」
「え……」
少し狼狽えるトト。
「あ~~~~! 私って本当に未熟だなぁ!!」
鉄のテーブルに、ガン! と、勢いよく額をつけ……もはやぶつける佐知子。
「…………俺も……まだまだ未熟だよ……」
佐知子の行動に、驚いて瞳を見開いた後、少しおかしそうにトトは笑った。
こうして、夕暮れになるまで二人は草木や鳥に囲まれながら、静かに会話を楽しんだのだった。




