20 意外な美味しさとほほえみ。
ポットからシャイのグラスに佐知子には未知のミント茶をそそぐトト。
そして白い小さな容器の蓋を開け、その中から取り出したのは角砂糖だった。すると、トトはシャイグラスに何個もドバドバと角砂糖を入れて行った。
「!」
いつぞやの、アイシャがたくさんシャイに角砂糖を入れて飲んでいた光景を思い出す。
「はい……どうぞ……多分、初めて飲むだろうから砂糖入れておいたよ……少なかったらごめんね……」
あの量で少ないは、ない! と佐知子は思いながら、
「ありがとうございます……」
と、目の前に置かれた湯気の立つ、葉っぱはないが大量に砂糖を入れられた茶色い液体を見つめ、どんな味なんだろう……と、不安に思いながらも思い切ってシャイグラスをつかんだ。
グラスは当然、熱かった。どうして熱い気候なのに、熱い飲み物を飲むんだろう……と、思いながらも、そっと口をつけると……
「!」
瞳を見開く佐知子。
「トトさん! これすっごく美味しいです!!」
その言葉に、誰が見てもわかる表情でトトは驚いて瞳を見開いた。
「砂糖たくさん入ってるから、いつもの甘いシャイみたいなんですけど、ミントの味っていうか、香りが飲み込んだ後、スーってして、すっごく!! おいしいです! うわー! すごーい! 私の世界のミントティーより全然美味しい!」
もう一度、佐知子はグラスに口をつける。
「……そう……よかった……」
どこか嬉しそうに、トトは斜め下を向いて、ほんの少しほほえんだ。
「……君……めずらしいね……」
「え?」
ミント茶を飲みながら佐知子はトトに聞き返す。
「みんなミント茶とか薬草茶は、臭いとか、まずいとか言って嫌うのに……俺は好きだけど……美味しいだなんて……」
今度は少しほほえんで、トトもミント茶を口にする。
「えー! 他の薬草茶は知りませんけど、このミントティー……ミント茶は本当においしいですよ! なんでまずいとか言う人いるんですか!」
少し眉間に皺を寄せながら大きめの声で伝えた佐知子に……
「……そうだね…………」
と、トトは薄く、優しく佐知子にほほえみかけた。
(……トトさん笑うとかっこいいな……いや、笑わなくてもそういえばかっこいいか……)
優しいほほえみをかけられ、少し赤い顔でうつむきながら、佐知子はミント茶を再度、口にした。




