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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第四章

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18 リャドから見る空。

(うわぁ……)


 中に入ると、庭は表で見るより凄かった。


 玄関周辺はそうでもないのだが、玄関からアーチ状の、壁に空いたトンネルのような場所を通ると、その中は二階建ての回廊がぐるりとたくさんの植物が生える中庭を囲っていた。


 そして中央には小さな噴水もあり、水音がパシャパシャと聴こえ、とても心地いい空間だった。


「リャドで……飲もうか。そこに座って……」


 リャド? と、思いつつ、佐知子が促されたのは噴水の横にある、骨組みが鉄で出来たたくさんのクッションと何枚も布が敷かれたソファだっだ。


 そして向かいあった二つの広めのソファの間には、青と白のテーブルクロスが敷かれた鉄のテーブルも置かれていた。


(上座って、どっちだったっけ……)


 奥と手前どっちに座ろうか悩む佐知子。

 そもそもこの世界に上座下座の概念はあるのかと悩んで立ち止まっていると、


「あー……植物…………嫌……?」


 トトの残念そうな声が聞こえてきた。


「あ! いえ! 違います! ソファ、どっちに座ればいいのかなって考えてて! マナー的に! 考えてて!」


 慌てて佐知子が弁解すると、


「……そんなことか」


 ふっと、トトが口元に手を置いて、ほんの少し笑った。


「…………」


 出会った時からいつも無表情だったトトしか見たことのない佐知子は、笑ったトトさんは以外とかわいい……と、つい目を奪われる。


「どっちでもいいよ。まぁ、この村では招かれたお客さんは普通は奥に座るけどね……」

「あ、奥なんですね! ありがとうございます!」


 私、何にも知らないから……と、言いながら、ほっとして佐知子はクッションがたくさんのソファに座る。


(うわぁ、なんか幸せ……)


 ふかふかの敷物とたくさんのクッションに囲まれ、空を見上げれば抜けるほどの青空で、けれどここは中庭なので強い日差しは入ってこない。ちょうどよい日陰。

 そして、周りには様々な植物。木や草、小さな花々。


「ここ、すっごく素敵な中庭ですね!」


 そばに立つトトに、佐知子が嬉しそうな表情で伝えると、


「……ありがとう……こういう中庭のことをリャド……っていうんだよ……アズラク帝国にはないかな……俺の故郷には当たり前にあったけど……」


 僅かに分かる悲しそうな表情をして、トトは説明してくれた。


「……そうなんですか……リャド……」

「じゃあ……薬草茶いれてくるから……ミントでいい?」


 トトはいつもの無表情に戻ると、お茶の準備に去ろうとする。


「あ、はい!」

「じゃあ……待ってて」


 また新しい知識を得た。と、佐知子が思っていると、トトは薬草茶を淹れに家の中へと入って行った。


(ミント……ミントティーかな? ……飲むのいつぶりだろう……)


 母と飲んだミントティーのことを思い出していると、


(てか、トトさんの出身地はどこだっけ? 確か教えてもらったはず……アフリカ系だから、アズラクでもセロさんの国でも、黄さんのホンでもないし……なんだっけ? もう一つあったよな……)


 先程の、僅かに分かった悲しそうな表情と共にこのリャドを教えてくれたトトのことについて、佐知子は思考が移る。すると、ピチチと、鳥が鳴いた。


(まぁ、いっか)


 と、佐知子はふかふかのクッションに寄りかかり、空を見上げる。


 日陰のリャドから生い茂る植物と共にみえる青空。コントラストが不思議な光景だった。

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