4 門の中へ。
閉じられた門まで来ると、先程と同じく両側に立った門番が敬礼してきた。
「ヨウ副長官、お疲れ様です!」
「ああ……開けてくれ……」
門番を真顔で見つめながらヨウは答える。
「あの……お連れの方は……」
門番が訝し気に佐知子を見ると、
「問題ない……長官達に会わせる大切なお方だ……開けてくれ」
ヨウはそこには触れるな。というオーラを出しながら、表面上は真顔で答える。
「ハッ! 失礼しました!」
慌てて門を開けようとする門番。
(……え?)
しかし、ヨウと門番の会話を聞いていた佐知子は焦る。
(今、ヨウくん何て言った? 何か今、長官たちに会わせるとか……ただ住む場所と仕事を頼んだだけなのに……何か凄く嫌な予感がする……)
佐知子の体は緊張で少し硬くなってきた。
鉄の門が開くと、そこは整地された広場のような場所だった。そして馬小屋とらくだ小屋もある。
その広場では、何十人かの色々な人種の男性達が談笑したり組手をしたりしていた。
何だか場違いな場所に来てしまった気がして、佐知子は嫌な汗が出そうな緊張感の中、深く布を被り俯いた。
(ヨウくんが布貸してくれてよかったかも……)
すると一人の、まだ少年位の白人の男性が近寄ってきた。
「ヨウ副長官! お戻りですか!」
嬉しそうにその青年は問う。
「ああ……」
「馬、お引き受けします」
そして手綱を受け取ろうとする。
「助かる……」
そう言うとヨウは馬を降りた。
「サチコ……」
そしてヨウが手を差し伸べてくるのが佐知子の視界の隅に見えた。
(だよね……降りないとだよね……)
ちらりと手綱を握っている青年を見ると、興味津々といった感じで佐知子を見ている。
(うっ……)
早く降りて行ってしまおう……どこに行くのかはわからないけど……と、佐知子は鐙に足をかけヨウの腕を掴み、ほぼヨウに抱え降ろされながら馬から降りた。
しかしその際に布がはらりと落ちてしまった。
「あ!」
手を伸ばすが布は地面へと落ちる。
「!」
佐知子の姿を見た青年はぎょっとしてる。
「…………」
ヨウは布を拾うと土を払い、また佐知子に被せた。
「あ、ありがとう」
佐知子は布をぎゅっと首元で握る。
「……行くぞ」
「うん……」
「馬は任せた……」
「は、はい!」
「…………」
動揺している青年をよそに、ヨウは淡々と佐知子を連れ堂々と歩いて行く。
佐知子も後に続いた。




