9 アーサーの心境。
アーマの男性が病院に行きたい旨を、佐知子はアーサーに伝えると、
「あ、そうだったんだ! やっぱり言葉通じないとダメだなぁ……じゃあ、病院に行って下さい。無料ですのでいつでも行ってくださって平気ですよ……って、伝えてもらえる?」
と、アーサーに佐知子は頼まれた。それを男性に伝えると、
「でも……言葉通じないだろ? サチコと一緒に行きたいんだけど、ダメかな?」
男性は困った様子で言う。すると、
「あ、あの! なんか病院に行く話になってるみたいだけど、俺も病院に行きたいんだ! 言葉通じないからサチコに通訳してもらいたいんだけど!」
「…………」
そばにいた白人の若めの男性が慌てた様子で会話に入ってきた。
(あちゃあ……)
何となく、アーマの人々に自分がとても頼りにされているような気がして、佐知子は心の中で呟いた。
アーサーに伝えるのが、とても気まずい。
「あのぉ……」
躊躇いながら、佐知子はアーサーに伝える。
「あー……じゃあ、集団検診ということで、サチコさんの予定を調整して、皆さんまとめてサチコさんと病院行きましょうか。多分、女性階行ったら同じような事になるだろうから。サチコさん、いい?」
苦笑しながらアーサーは佐知子に顔を向けた。
「はい! 私はかまいません!」
「ありがとう」
慌てながら佐知子が答えると、アーサーは笑顔で返してくれた。
そして、じゃあ皆に伝えて。と言われる。
佐知子が伝えると、皆は、わぁ! と声を上げた。
いつだ? と聞かれたが、まだ未定だと答えた。
よかった、俺も痛いところがあってな。俺は痒くてよぉ。と、会話が出来る人達が少し話している。
アーサーは少し下がって、その状況を複雑な表情で見ていた。




