表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

209/267

7 納得の理由。

「みなさん、こんにちはー」


 アーサーが、アーマ宿舎の男性階へと階段を上り、アズラク語でアーマの人々に声をかける。

 佐知子はアーサーの荷物を持ちながら後に続いて、こんにちは。と挨拶をした。

 すると、


「サチコ! サチコじゃないか!」

「お嬢ちゃん! またきてくれたのか!」


 わっと男性達は佐知子の方へと集まって来た。


「あ、皆さん、こんにちは。今日から国事部で働くことになって、アーサーさんの補佐係になりました。何かあったら通訳しますので言ってください。よろしくお願いします」


 迫り来る人々に後退りしながらも、佐知子はほほえんだ。


「おお! 本当か!」

「やったぞ!!」


 皆、喜んでいた。佐知子が苦笑していると、


「……君、今、アズラク語で話してたよね?」

「え?」


 きょとんとした表情でアーサーが佐知子に声をかけてきた。


「何で皆さんに通じてるの? 皆さんバラバラの言葉で話してたのに……え、あ、うわぁ……凄い……そういうことか……噂、本当だったんだ……」


 驚愕の表情をするアーサー。


「これは試験も受けないで特別に役場で働けるはずだよ……」


 アーサーは口を押さえながら溜息交じりに呟いた。


「え……それはどういう……」


 アーサーの言葉に疑問を覚え、佐知子は問いかける。


「いやー……役人ってさ、皆、難関の書記試験受けてやっとなるのに、いきなりポンって君が来たから役人宿舎で色々噂になってたんだ……ハーシム長官、色仕掛けで……とか……賄賂とか……でも、多言語話せるとか……何か不思議な力持ってるとか……色々」

「ああー……」


 その言葉に佐知子はようやく役人宿舎での皆の態度に納得した。

 そしてカジャールの態度にも納得がいった……。

 引っ越してきた時に言われた言葉もそういうことか……と、佐知子が少し暗い顔をしていると、


「でも……本当に不思議だよね、多言語話せるっていうより魔術みたいな……」


 その言葉に、佐知子はドキリとする。


「ま、まぁ! そんな事よりお仕事しましょう! 四時迄ですし!」

「あ、うん」


 魔術という言葉を聞き佐知子は少し焦った。

 何か魔女狩りのような、危険人物として扱われないかと。

 確かに多分、神様から力を貸してもらった人知を超えた力なのだが……。


「えーっと、まずは一人ずつ健康状態を聞いていくよ。あと様子見。具合悪そうじゃないかとか、体に斑点とか疫病みたいな異常がないか軽く見ながら。まぁ、今までかなり大変だったんだけどね、言葉通じなかったから。やってるようでやってなかったようなもんで。で、その後は何か要望がある人は来て下さいって話聞いてたんだけど、それも身振り手振りと簡単なアズラク語で話してて……君が来たからだいぶ楽になりそうだね。じゃあ、あっちの端から行こうか」


 アーサーは佐知子に説明をすると、左側の区切られた部屋代わりのスペースを指差した。


「こんにちは、国事部の者です。体調は悪くはないですか?……って、訳してもらえる?」


 アーサーは優しい人だった。アーマの人々にも差別をせず、優しい笑顔と態度で接する。


「はい! こんにちは、国事部の者です。体調は悪くないですか?」


 そんなアーサーの力になろうと、佐知子は思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ