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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第四章

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6 アーサー。

(つ、つか……れ、た……)


 昼休みになり、佐知子はぐったりとしながら役人宿舎へと戻る。

 肉体的にほぼ疲れはないのだが、精神的疲労が凄かった。これなら慣れたせいもあるが、軍用地での炊事係の肉体労働の方がましだな……と、佐知子は思ってしまう。

 来る人来る人の壮絶な苦労話や涙を見て、聞いているのは精神的にこたえるのだ……。


「ありがとうございます……」


 そしてぼんやりとしながら昼食を貰う。

 もう定位置になった佐知子の場所に座り、はぁ……と息を吐きプレートを見た。


(あ! 今日は豚肉だ! やった!! 滅多に出ないから嬉しい!)


 ちょっと嬉しい事があってよかったな。と、佐知子は少し笑顔で昼食を頬張る。

 しかし、視線や陰口に気がついた。


(気にしない……)


 スパイスで味付けされた美味しい豚肉を頬張る。


 これ位で音を上げていては戦を失くすこと何て出来やしない。

 きっとこれから先、外交官になれたら、もっと大変なことが待っている。

 そのための試練だ。


「ごちそうさまでした」


 手を合わせ、佐知子は食器を返却口へと持って行った。ごちそうさまです。という言葉も忘れずに。


 そして午後からはアーマ宿舎へ行くことになっているので、佐知子は役人宿舎前で待っていた。


(確か、アーサーさんって人が入口に来てくれるんだよね……アーサーさんって、あの病院で会ったアーサーさんかな? 多分、そうだよね?)


 午後の強い日差しを浴びながらカバンを持ち、佐知子は宿舎前でアーサーを待つ。

 すると、


「ああ! そんな所で待ってなくていいのに!」


 という、慌てた優しい声が聞こえてきた。


「え?」


 背後から聞こえてきた声に佐知子が振り返ると、そこには慌てた様子のノーラと病院で別れるときに会った、あのアーサーがいた。


「中、入って入って! 熱射病になっちゃう!」


 アーサーに靴棚の前に手招きされる。


「あ、はい……」


 アーサーさんもどうやら好意的っぽいな……と、佐知子は少しほっとする。


「タカハシ……サチコさんだよね?」

「はい」


 日陰の靴棚の前で、二人は話す。


「やっぱり。僕はアーサー。前に病院で会ったよね?」

「はい、あの時はノーラさんをありがとうございました」


 佐知子は頭を下げた。


「いやいや、仕事だから」


 少し困ったような笑みでアーサーは後頭部をかいて笑った。


「僕はアーマの管理係。……まぁ、色々押し付けられちゃってる感じの雑用係でもあるんだけど……」


 ははは。と、アーサーは笑う。


 アーサーは以前会ったときにも感じたが、人が良さそうだなぁ……と、佐知子は思った。それ故、面倒な仕事を色々押し付けられているのだろう……。佐知子は推測する。


「で、これからアーマの皆さんの状態調査と希望聴取に行くんだけど……いやー、君が来てくれて助かったよー。いや……まだ半信半疑なんだけどね。君、多言語話せるんでしょ? 今、話してるのはアズラク語だけど……」


 不思議そうなアーサーに、


「あ、はい……なんか……多分、話せると……」


 微妙な感じの笑顔で少し下を向いて佐知子は答えた。


「凄いよねぇ……あ、行こっか!」

「え、あ……はい」


 通り過ぎる人の目を気にして、アーサーは慌てて笑顔を取り繕い歩き出した。

 おそらく佐知子と親密にしている所を見られたくないのだろう。

 まぁ、仕方ないよな……と思いながらも、佐知子は少し悲しさを感じた。

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