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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第四章

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4 職場説明。

 役場の中に入ると、役人宿舎同様、人の多さの割に静かだった。


 きちんと見た役場は黄土色のレンガ造りで天井が高く、アイシャの家で見た様な濁ったガラスの窓がたくさんあり、中は少し装飾のついたアズラクランプが灯されているが、日中はランプがいらなくても明るそうだった。


 ズハンの後をついて行くと、まだ読めない文字と読める文字で、衛生課や、多分、税務課などの文字が、レンガで出来た窓口に立てかけられた白い石板にアズラク語で掘られていた。


 難民課は以前、来たことのある役場の一番奥。

 窓口は一つだけだが待機列の場所をかなり取っていた。


「はい、着いた。ここが難民課……ちょっと臭うけど我慢してね」


 ズハンは苦笑する。


「はい! 全然、平気です!」


 確かに難民課は難民の人達が毎日ずっといるせいで少し汗というか、独特の臭いが漂っていた。


「あ、上司来たら紹介するわね。私を怒ったこわーい上司……なんてね、普段は温厚な人よ。まぁ、何ていうか……諦めちゃってるっていうか……」

「はぁ……」


 諦め? と佐知子は思いながらも、ズハンの話を聞く。


「大体、役場は窓口と中の業務スペースに別れてるんだけど、ここも同じね。あなたの机は私の横よ、昨日運ばれてきたわ。ちょっと古くて汚いけど我慢してね」

「大丈夫です!」


 指し示された佐知子の事務机は、綺麗な鉄の足に石の天板の他の人の机に対し、錆びた鉄の足と欠けたりへこんだりしている石の天板だった。


「まぁ、あなたの仕事は窓口がメインだから。ここに座って難民の人の言葉を私に伝えてくれればいいわ。一日中」


 ズハンは窓口へ行き、草の蔓の背もたれのついた椅子に手を置いた。


「一日中……」

「そう、一日中。まぁ、正確には一日中じゃないんだけどね。一日中のほうが私は嬉しいんだけど。予定表貰ってるでしょ?」


 ズハンは問う。


「あ、はい! えっと……確か、昼食のあとはアーマ宿舎に行って、終わったらまた窓口ですよね?」


 昨日、確認した予定を答える佐知子。


「そう、アーサーとアーマ宿舎行ってね。あっち行ったりここやったり大変だけど、長官からそういう指示が出てるから、私のせいじゃないから。ま、頑張ってね」


 気の毒そうにズハンは微笑んだ。


「……はい」


(ハーシムさんの指示なのか……)


 やっぱり試されてるんだな……と、佐知子は思う。

 すると役場の扉が開き、人が入ってきた。


「さ、仕事開始よ! 頑張って!」

「はい!」


 こうして、佐知子の役人補佐としての仕事が始まった。

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