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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第三章

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12 相部屋のカジャール。

 ヨウが慌てて身体をずらすと、その隙間をすっと一人の同い年くらいの少女が入ってきた。


 その少女は佐知子がいた世界でのインド系の女性によく似ていた。

 褐色肌で、彫りが深く、黒い瞳に眼鏡をかけ、セミロングより少し長い黒髪を両脇で三つ編みにしていた。


 さすがにインドの民族衣装っぽいものは着ていなかったが、なんという名前なのか佐知子にはわからない額につける赤い物はつけていた。


 真っ白いカンラを着て革のカッチリとした長方形の手持ち鞄を持っている。


「相部屋の方もご帰宅されたようなので私たちはお暇しましょう。それでは失礼いたします」


 国事部の女性は佐知子に部屋の鍵を渡し頭を下げ、相部屋の少女にも頭を下げ部屋を出て行こうとした。


「あ……じゃあ……荷物置いておくな……あ……が、がんばれよ……」


 急な展開にヨウは色々かけようと思っていた言葉も飛んでしまったらしく、荷物を佐知子の側に置くとしどろもどろにそう言い、じゃあ……と軽く手を上げ部屋の外で待っている国事部の女性の元へと早足で行ってしまった。


「ありがとう……またね」


 佐知子がそう行って手を上げると重い扉はバタンと閉められた。


「…………」


 部屋の中には重苦しい沈黙が流れる。


 佐知子は上げた手を下げながら、我関せず。といった態度で鞄の中の物を机の上に出している相部屋の少女を見た。


(なんか……好意的じゃない……よね……)


 使用人小屋で隣の場所になった時のライラとの違いに佐知子は焦る。

 しかし、こっちから話しかけないと! と、思い直し声をかける。


「あ、あの! 今日から相部屋になりました、サチコといいます。よろしくお願いします!」


 笑顔で頭を下げる佐知子。


「……よろしくお願いします」


 しかし一言そう言って、少女は椅子に座った。


「…………」


 明らかに歓迎されていない雰囲気を感じる佐知子。


「あ、あの……お名前は……」


 苦笑しながらさらに佐知子は問う。


「……カジャールです」


 一言、インド人に似た容姿の少女、カジャールは答えた。


「カジャール……さん、よろしくね! 歳、近いよね! いくつ?」


 ここから会話を広げようと、なんとなく名前にさんをつけてしまったが、佐知子が会話を続けると、


「……なぜ年齢をあなたに言う必要があるの」


 佐知子は硬直した。


「おしゃべりが好きなのね……見たところ容姿はたいしたことないし、話術でハーシム様やヨウ副長官をたらしこんだのかしら……」


 言い終わるとカジャールは席を立ち部屋を出ていった。

 バタン! と、重い扉が遠慮なく閉まる。


「………た、たらしこんでなんかないし!」


 扉が閉まってから、佐知子は扉に向かって叫んだ。


(何、あの子! ひどくない!? 初対面なのに!!)


 佐知子はむっとしやり場のない怒りを、ブン! と、手を振り下ろすことで発散した。


(ん~……しかし、どうしよう……)


 そしてイライラしながらもやることは山積みなので、頭をかきながら考える。

 荷物の片付けもあるが、まずはこのパピスの内容を知らなくてはならない。

 明日からの事もあるので今日中にだ。


(今からヨウ追っかければ間に合うかな……)


 荷物をじっと見つめたあと、


「よし! とりあえず、荷物は隅に置いといて追いかけよう!」


 佐知子は声に出し、重い荷物を持ち上げ窓の下に置くと、トートバックくらいの革の鞄に元の世界から持ってきたノートとペンケースとパピスを入れ部屋を出た。

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