11 新しい部屋。
広間の奥中央にある階段に、国事部の女性は向かった。
佐知子とヨウもあとについて階段を上ると、折り返した階段の先は廊下だった。
二階の壁は白く漆喰で塗られている。床には絨毯が敷かれていた。
階段から真正面に延びる廊下から更に左右に延びる廊下、その先にも左右に廊下が延びており、慣れないと迷子になりそうだな、と、佐知子は思う。
「階段を上って右側は個室です。左側は四人部屋と二人部屋になります。タカハシ様には二人部屋に入居していただきます。すでに一名入居者がいますので相部屋になります」
左に曲がりながら国事部の女性が淡々と言う。
「はい!」
荷物を持ち上げながら佐知子は返事をした。
(二人の相部屋なんだ……どんな子だろう……)
仲良くなれたらいいな……と、佐知子は思う。
左に曲がり少し進んだ所は十字路になっていた。
そこを更に左に曲がった突き当りからひとつ前の部屋で、国事部の女性は立ち止まった。
「ここがお部屋になります」
ガチャガチャと鍵を開け、国事部の女性は鉄の扉をギィっと開いた。
そこは、奥に中くらいの窓がひとつある、八畳か十畳ほどの部屋だった。
入って右側に鉄と草の蔓で出来た二段ベッドがあり、下は使われているようだった。
そして左側に木製の机が壁に向いて二つ。そして二つの机の間に壁に空いた棚も二つある。
二人なら程良い広さの白い漆喰に塗られた簡素な部屋だった。
「タカハシ様は奥の机と棚、上のベッドをお使い下さい」
中に入りながら国事部の女性はそう伝えてくる。
「はい、わかりました」
中に入りながら答えると、
「あとこちらが門限や食堂の使用時間、明日からの予定になります。お読みになっておいて下さい」
渡されたパピスには、佐知子の今の知識では所々しか分からないアズラク語がびっしりと書かれていて、後でヨウに音読してもらおうと佐知子は難しい顔をして思った。
「それでは、私はこれにて失礼いたします。ヨウ副長官も荷物を運び終わりましたし、一緒に出なくてはならないのですが、かまいませんでしょうか?」
佐知子とヨウは問われる。
(え、パピスの内容、読んでもらわないと困るんだけどな……あ~……でも、あとで外で会えばいいか……)
と、思ったその時。
「すみません、失礼いたします……通りたいのですが」
抑揚のない、静かな落ちついた声が聞こえた。




