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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第三章

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10 役人宿舎。

「こちらが、役人宿舎です」


 軍用地の門を出て役場の横の道をしばらく行くと、中流階級が住んでいる一戸建ての、塀のレンガを白い漆喰で塗った白い住宅街の中に、その三階建ての白い大きな建物はあった。


(これだったのか……)


 以前から遠くに見えるあの白い建物はなんだろうと佐知子は思っていたので、まさかこれが役人宿舎とは……と、ぽかんと口を開けて見上げた。


 その、この村では割と大きな三階建ての建物は、やはりレンガで作られているが白い漆喰で塗られ太陽の眩しい日差しを跳ね返していた。窓がびっしりと並んでいる。各部屋の窓だろう。


「中へ入りましょう」


 静かにそう言われ向かって左端にある閉じられた鉄の扉へと三人は向かう。

 国事部の女性が扉につけてある鉄製の丸い輪のドアノッカーをカンカンと鳴らすと、重そうな鉄の扉がギィっと音を立てて開いた。

 中から大分、年を取ったカンラ姿の褐色肌の男性が出てくる。


「すみません、国事部の者です。今日から入居する方をお連れしました」


 国事部の女性が少し頭を下げると、門番らしき老人は頷き扉を左右に開く。


「入りましょう」


 振り返り、国事部の女性は佐知子とヨウに声をかけた。


(涼しい……)


 中へ入ると扉を閉じていたはずなのに中は意外と涼しかった。


「ここでサンダルや靴を脱いでください。左右に棚がありますので自分の名前が書かれている所へ入れてください。タカハシ様のはこちらになります」


 そう指し示されたのは左側の棚の右下辺りだった。

 アズラク語で自分の名前は分かる様になったので、自分の名前が書かれているのを見て、佐知子にも分かった。


「わかりました」


 と返事をすると、


「私とヨウ副長官はとりあえず、ここに脱いで置いておきましょう」


 三人は中へと入る。

 入口を入ってすぐの一階は広い絨毯の広間だった。


「わー、広いですね……天井もランプがいっぱい。シンプルだけど」


 床の絨毯と天井から吊るされたシンプルなアズラクランプを見上げて、異国情緒に佐知子が少しわくわくとしていると、


「ここは食堂兼談話室で……まぁ、食堂をメインとした何にでも使用可能な場所です。あちらから食事を受け取ってください」


 入口から見て右側の奥は炊事場になっていて、今も昼食を炊事係の人が必死に作っている。何だか懐かしくなる佐知子。


「左手奥がトイレになります。男女別れていますので」


 指し示された先には鉄の扉で閉められた少し大きな部屋のようなものが二つあった。


「え! トイレ、部屋の中にあるんですか!?」


 佐知子は驚いて思わず大きな声を出す。


「……役人宿舎は水洗トイレですので」


 その言葉に、


「え!」


 と、さらに佐知子は叫んだ。


 使用人小屋にいた時は、幼い頃遠い親戚の年老いた農家の家に行った時に使った、家の外にある覗いたら糞尿が見える和式トイレの様な物を使っていたからだ。


「……水洗トイレなんてあるんですね……」


 佐知子は驚いてつい言葉にしてしまう。


「あります」


 至極冷静にきっぱりと言ったが、国事部の女性の言葉にはどこか刺があった。


「この階段を上ると二階が女性専用階、三階が男性専用階になっています。二階も三階も作りは同じですが、原則として何か緊急事態、非常事態がない限り異性は立ち入り禁止です。また、この宿舎に役人でない者を連れ込むのも原則禁止です……今回は私もいるので特別に許可しますが最初で最後です」


 国事部の女性はちらりとヨウを見た。

 ヨウは居心地が悪そうに、うっと少したじろいだ表情をした。


「……わかりました」


 佐知子は答える。


「あと……役人でない者を連れ込んではもってのほかですが、役人同士でも淫らな行為を行った場合は役人資格剥奪ですのでご注意を。まぁ……タカハシ様は役人ではないですが、長官……ハーシム様から『それ相応の処罰は受けることになるからな』との事です」


 その言葉に、佐知子は少しむっとする。


(何かさっきからこの人、徐々にあたしにきつくなってないかな……てか、淫らな行為なんてしないし……)


 少しムッとした表情で佐知子はそう思う。


「では、部屋へまいりましょう」

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