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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第三章

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4 悲しくも楽しい夜として。

「そうなんですか……」


 ハンカチ洗って返しますね。と言いながら、どうしようか悩む佐知子。


(一応、二十歳までお酒とタバコはやめといた方がいいよなぁ……違法薬物はもってのほかとして、でも、お酒……)


 佐知子は悩む。

 実は元の世界にいる時、父の晩酌に時々付き合って飲んではいた。


(お酒……飲んでもいいかなぁ……ハメ外さなければ……いや! やめよう!! そこはハーシムさんに何か言われそうだし!)


 ハーシムの顔を思い出し、佐知子は踏みとどまった。

 後で何を言われるか分からない。

 品行方正に……と、メリルに伝える。


「すみません、やっぱり私、お酒は……明日、引越しですし……ジュースか何かもらえますか?」


 するとライラが、


「もー! ノリ悪ーい!」


 と、勢いよく濁ったお酒、クーラを飲み干す。


「…………」


 あんなアルコールきつくて、消しゴムのような味の物を……と、佐知子は絶句した顔で見ていた。


「分かったわ。私もクーラは少し苦手なの。ビール貰うからサチは何かジュースね。すみませーん!」


 この店はキッチンにいる中年の旦那さんと、ホールにいる奥さん、そしてその息子らしき若い青年の三人で店を動かしているようで、メリルは青年に声をかけた。


 ごめんなさい。と言いながら、佐知子はメリルが注文している間、辺りを見渡す。


 皆、楽しそうに、オレンジ色の少し薄暗い明かりの中、飲み、食べ、喋っていた。

 サリーマはキッチンの旦那さんと話している。


(この皆の顔見るのも……わいわいご飯食べるのも……今日で最後なんだな……)


 佐知子は少し悲しくなる。

 けれど、それは自分で決めた、この村から、世界から、戦争をなくすための第一歩を踏み出すため。

 佐知子は少し下げていた顔を上げる。


「はい、サチ、ザクロジュースでいい?」


 メリルがジュースをくれた。


「ありがとうございます」


 佐知子は笑顔で受け取る。


 楽しもう。今日のこの夜を。

 そして楽しい思い出として、記憶にしっかり刻もう。

 佐知子はそう思った。

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