3 送別会の始まり。
「はーい、飲み物まわしてー」
サリーマが場を仕切って行く。
サリーマさんは最初は看護係で一緒になって怖いイメージだったけど、それから打ち解けてサバサバしたかっこいいお姉さんのイメージに変わったなぁ……と、思いながら佐知子は飲み物を受け取る。
それは乳白色の飲み物だった。
(これ……なんだろ。カルピス? な訳ないか……)
分厚いガラスのグラスを佐知子は握る。
そして次から次へと見たことのない様な、けれどどこかで見たことがある様な、様々な料理が運ばれて来た。
(うわー! おいしそう!)
まわされて行く肉料理やサラダ、豆料理などのそれらを見ながら、自分の目の前に置かれた物を見て、佐知子は心の中で思った。
(これ、何のお肉だろう……)
目の前に現れた巨大な生きてた時そのままの肉の塊に、ちょっとたじろぐ。
「よーっし! 酒も料理もまわったね! それじゃあ、サチコの前途を祝して乾杯だ! かんぱーい!」
サリーマのかけ声に、皆も、かんぱーいとグラスを上げる。
佐知子も笑顔でグラスを上げ、その乳白色の飲み物を一口、飲み込んだ。
「グホッ! ゲホッ! ゲホッ!」
しかし飲み込んですぐに、佐知子は強烈な刺激と独特の香りに吐き出すのは堪えたが、口を押さえて咳き込んだ。
「サ、サチ? どうしたの? 大丈夫?」
ライラが心配してくれる。
「クーラ、きつかった?」
メリルが、ハンカチを渡してくれる。
「こ、これ、お酒……? ですか?」
佐知子が恐る恐る聞くと、
「うん」
「そうよ」
と、二人は平然と返してきた。
「お酒!? 私、まだ十六ですよ!?」
慌てて佐知子は叫ぶが、ライラとメリルの二人はきょとんとしていた。
「んーっと、サチのいた国では何歳までお酒ダメだったのかな?」
少し困った顔でメリルは問う。
「……お酒は二十歳からです」
「二十歳!? もうババアじゃん!」
佐知子の言葉にライラが返すと、すかさず、
「ライラ!」
と、メリルが嗜める。
「サチの国にはサチの国の法律があるのよ! ん~……でもね、サチ、ここはもうアスワド村だから、そういうのは気にしなくていいんじゃないかしら? 皆も、もう気にせず飲んだり吸ったりしてるし」
その言葉に、やっとむせ終った佐知子は疑問を浮かべて、神妙な表情でメリルを見る。
「吸うって……」
その言葉にメリルは慌てる。
「あ、タバコよ! タバコ! 違法な葉っぱではないわ!」
両手を振って慌てて答えるメリルに、この世界にも酒、タバコ、違法薬物があることを改めて佐知子は知った。




