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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第三章

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2 夜の街を歩きながら。

 次の日の夜。


「さぁ! 夜の街へ繰り出すよ!」


 軍用地の門を大勢でぞろぞろと出ると、サリーマが指を上げ使用人小屋の皆を振り返りながら、夜空の下、微笑む。


「と言っても、明日、仕事ある人はハメ外しすぎないように注意ねー」


 しかし、そう釘を刺した。

 はーい。など、元気な声やがっかりした声が返ってくる。

 すみません……と、佐知子は申し訳なさそうに頭を下げた。


 送別会は皆に使用人小屋を去ると知られてから、引っ越しが明後日の為、翌日の夜だった。

 サリーマがとっておきの店を急だが用意してくれたらしいが、どこの店なのかは佐知子に教えてくれなかった。皆にも。


「変なやつに絡まれないようにかたまってねー」


 サリーマは夜の街に慣れているようで、後ろを振り返りながら賑わう夜の街を颯爽と歩く。


「どこに行くんだろうね」


 佐知子の腕にぎゅっと飛び掴みながら、ライラが笑顔を向ける。


「どこだろうねー、まぁ、私は飲食店まったく知らないんだけど……」


 と、佐知子が答えると、


「え! ヨウ副長官と外で食べたりしたことないの!?」


 眉間に皺を寄せてライラが問う。


「え、うん……」


 なんでヨウが出てくるの……と、佐知子が思っていると、


「ヨウ副長官……それでいいのかしらねぇ……ぐずぐずしてると他の誰かに取られちゃうかも知れないのに……」


 もう片側にメリルがやってきた。


「え!」


 佐知子がメリルを見ながら声を上げると、


「そうだよねー! サチ、朝番だけなんだから誘い放題なのにさー! なにやってんのあのグズ男!」


 ちょっとライラ! と、メリルが嗜める。


(グズ男……)


 ヨウへの酷い言われ様に、佐知子は呆然としてしまう。


(皆が私とヨウをくっつけようとするけど……私とヨウは……どうなんだろうなぁ……まぁ……大切な存在ではあるけど……)


 綺麗なアズラクランプや、簡素なランプなどで照らされる、様々な色の夜のスークを歩きながら、佐知子は夜空を見上げた。星はわりと綺麗に見えた。


「さー! サリーマさんが一日で貸切にしたのはここだよ!」


 サリーマが足を止め、ある店の前で振り返る。

 その店を見て、皆が歓声を上げた。え、え? と、佐知子が戸惑っていると、


「サリーマ、すごーい! こんなすぐにどうやってここ貸切にしたの!?」

「てか、予約もできないのに!」


 数名が叫ぶ。


「ふふん。サリーマさんの顔の広さと交渉術を舐めちゃいけないよ」


 サリーマはにやりと笑う。佐知子は店を見た。


 そこはこじんまりとした、レンガをオレンジ色に塗った鉄の扉のお店だった。

 入口の上部には綺麗なアズラクランプが五つくらい吊るされ、とても綺麗に輝いていた。

 お店の名前は……読めなくて分からない。

 けれど、店のドアにぶら下げられた『貸切』という文字は読めた。


「こんばんはー!」


 そう言いながらサリーマが扉を開き、中へと皆でぞろぞろ入る。


「うわぁ……」


 佐知子は声を上げてしまった。


 なぜなら中は綺麗なアズラクランプがいくつも吊る下げられ少し薄暗いが、その中でオレンジ色の壁に、天井から透けた布がたゆらされながら飾られ、薄暗い綺麗なランプの中で布がゆらめいている……なんとも幻想的な光景だった。皆もはしゃいでいる。


「はいはい、みんな適当に座ってー」


 サリーマに促され、ぞろぞろと皆は座る。


「あ、サチは中央ね!」


 入って右手にキッチンとカウンター席、そして左手に平行に四つのテーブル席がある。


「あ、はい!」


 見惚れていた佐知子はテーブル席の中央に座る。


「じゃあ、あたしサチの隣ー!」

「じゃあ、私も」


 そういって両隣にライラとメリルが座る。


「じゃあ、あたし前ー!」


 比較的仲のよかった人が次々に周りを埋めていく。

 それだけでも嬉しくて、佐知子は泣きそうな笑顔で微笑んでいた。

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