26 何度目かの会議室。
その後、佐知子はアーマ宿舎へと週に二、三回の頻度で通い、皆で楽しく談笑していた。
女性階で話していると楽しそうな話し声に惹かれ、男性もちらほらとやってきた。
一応、立ち入り禁止らしいのだが女性達がかまわないというので、男性も増え結構な人数で毎度楽しく会話をしていた。
そんなある日のこと……。
昼ご飯を食べ終え勉強会をしようとセロの部屋へと向かう。
いつものようにノックをして中からの返事を聞き、扉を開くと、
「来た来た」
「…………」
そこには椅子に座り、妙に嬉しそうな顔をしたセロと、セロの向かいで立ったまま心配そうな表情をしているヨウがいた。
「あれ? ヨウどうしたの? まだ休憩時間じゃないのに……」
扉の前で立ちながら、佐知子が様々な疑問を抱きながら問うと、
「サッちゃーん、随分大事になっちゃったみたいだねー。まぁ、都合いいかもしれないけど」
さて、行くか。と、セロは椅子から立ち上がる。
「え?」
何のことかさっぱりわからず、勉強道具を持ったまま佐知子がそこに立ち尽くしていると、
「はい、これここに置いて行こうねー」
と、セロが勉強道具を佐知子から取り上げテーブルへと置きに向かう。
すると、ヨウが佐知子の所へやってきた。
目の前に、背の高い、筋肉の程良くついた立派な体躯の、今日は黒地のズボンとベージュの長袖のシャツを着ているヨウが立つ。
「サチコ……これがいい機会になるといいんだが……不安になったら、ギドの丘で話したことを思い出せ……」
そして少し長い黒髪の前髪越しに、深い緑色の瞳でじっと佐知子の瞳を見つめ、つぶやくように静かに言った。
「え……ギド……?」
佐知子が戸惑っていると、
「はいはい行こうねー! みんな待ってるよー!」
セロが佐知子の両肩に手を置きくるりと回転させ、入口から白い廊下へと押し出す。
「え、え? あの!?」
そのまま押されて佐知子はまたあの場所……この世界に来てヨウに連れてこられた緊張の場所、廊下の右奥にある会議室の扉の前へとやってきた。
「え?」
佐知子は焦る。
(みんな待ってるとか言ってたよね……? え? 何?)
嫌な予感がする。この中に入りたくない……。
佐知子はそう思った。
しかし無情にもセロがうきうきで扉を開けてしまう。
「はーい! サッちゃん連れてきましたー!」
セロが佐知子の右肩に手を乗せたまま左手で扉を開け、大きな声で中にいるであろう人物達に伝える。
会議室の中にはあの時と……最初にこの部屋に連れてこられた時と同じメンバーが座っていた。
そして、背後の扉は閉められた。




