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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第二章

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23 元の世界の事。

 和やかに中央の絨毯でアーマの女性同士の通訳や、佐知子への質問などを受けたりして時間は過ぎていった……。


 すると、正午の鐘が鳴る。


「あ! もうこんな時間! お昼ですね、じゃあ今回はこの辺で。長々とすみませんでした、ありがとうございました」


 絨毯に集まってくれた女性達に佐知子は頭を下げる。


「えー! 帰っちゃうの?」


 アーマの一人、アラブ系の女性が残念そうに言う。


「まだいいんじゃない? お昼一緒に食べましょうよ」


 極東アジア系の女性がそう提案した。

 しかし、


「余分な分はないだろう。この子にはこの子の生活があるんだ。おかえりよ。それでもしよかったら……また来ておくれ」


 ノーラと同室の初老の女性が静かにつぶやいた。


「はい!」


 佐知子は満面の笑みで微笑む。


「ノーラさん……今日はノーラさんの様子聞きに来たのに、ちゃんと話せなくてすみませんでした……今度はちゃんと二人でお話ししましょうね」


 マグカップは私が洗っておくわ。と、言われ渡す際に、佐知子は申し訳なさそうにノーラに伝えた


「……いいのよ、気にしないで。みんな楽しそうだったから。あなたはあなたの役目を果たして」


 ノーラはマグカップを受け取り、佐知子を見つめながら何かを想い、伝える。


「役目?」


 佐知子は疑問符を浮かべ聞き返した。


「さ、お昼よ! 食べ損なっちゃうわ! 早く自分の小屋に帰りなさい!」


 ノーラは佐知子の背を押しながら階段へと向かわせる。気をつけるのよ! と、階段を降りる佐知子に母親らしい温かい笑顔を向けた。


「…………」


 一瞬、元の世界の母親の事を思い出した。



(……お母さん……心配してるかな……)


 使用人小屋へと戻る道すがら母親のことを考える。

 それを皮切りに、佐知子は元の世界のことを次から次へと思い出してきた。


 こちらの世界に来てから、約二ヶ月以上は経っている……。


 私の扱いはどうなっているんだろう……突然の行方不明……扱いかなと、佐知子は思いながらゆっくりと俯いて歩みを進める。


 この世界に来て帰りたいと思ったことはなかったし、いつ帰されるのかという不安は何度もあった。


 けれど、元の世界の事や、家族や友人の事を考える事はほぼなかった。


 しかし先程のノーラを見て、急に母の事を思い出す。

 元の世界の事を思い出す。


(皆、心配してるかな……行方不明で……泣いてるかな……お母さん……)


 佐知子は初めてこの世界に来て、向こうの世界を思い泣きそうになった。


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