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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第二章

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14 君の微笑み。

(もういいかな……まだダメかな……)

「サチコ? どうかしたか?」

「え!」


 ノーラ親子がアーマ宿舎に入ってから一週間後の勉強会の休憩の時間、佐知子は温くなったシャイのグラスを握りながら見つめ、ぼーっと考え事をしていた。ぼんやりしている佐知子に気づいたヨウが声をかける。


「ああ! えっと……ノーラさんに……もう会いに行ってもいいかなぁ……って考えてて」


 佐知子は慌てて答える。


「ああ……あの世話した難民の親子か」

「うん」


 佐知子はシャイのグラスを置く。


「落ち着いたら遊びに来てねって言われたんだけど……もう落ち着いたのか、本当に遊びに行っていいのか……何か悩みつつ一週間ってまだ早いかなーとか更に色々考えちゃって……アーマ宿舎の場所も知らないし……」


 少し佐知子が俯くと、


「命の恩人に社交辞令なんて使わないでしょー。そんな人なら俺が村から追い出してあげるよ」


 セロがあーんと一口サイズのチョコケーキの様なお菓子を頬張りながら物騒なことを言う。


「セロさん!」


 そんな事言わないで下さい! っと佐知子が立ち上がると、


「まぁ……社交辞令ではないと思うが……一週間はちょっと早い気もするが……まぁ、明後日にでも行ってみたらいいんじゃないのか? 明後日はサチコも休みだろ?」

「あ、うん! 休み! そっか……行ってみようかな……」


 佐知子が少し嬉しそうにしていると、


「ちなみにアーマ宿舎は正門入った正面の、あのレンガの建物だ。覚えてるだろ?」


 その言葉に、佐知子は目を丸くする。


「え! あれ!?」

「そうそう、正門破られたら犠牲はまず難民からってね」

「セロ!」


 ヨウがセロに怒鳴る。


「畑に行くのに一番近いからだ!」

「どうかな~?」


 ニタニタと笑いながらセロは肘を突いてフォークをくるくると回している。


「セロさん……」


(まぁ、確かにそういうこともあるかもしれないけど……)


 現実は残酷だからなぁ……と、今まで見てきたことを思い出しながら佐知子は思う。


「うん! でもとりあえず明後日、行ってみる! あ、でもアーマの人達も仕事してるからいないかな?」

「サッちゃんの休みの日は村の休日だから、アーマの人達も休みだよ。よかったね」


 パクリと、またもやケーキの様な物をセロは頬張り、微笑んだ。


「あ! そうか! すっかり忘れてた! よかった!」


 安心した佐知子は嬉しそうに微笑んでお菓子を頬張った。


「…………」


 そんな佐知子を穏やかな微笑みで、二人は見つめていた。

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