14 君の微笑み。
(もういいかな……まだダメかな……)
「サチコ? どうかしたか?」
「え!」
ノーラ親子がアーマ宿舎に入ってから一週間後の勉強会の休憩の時間、佐知子は温くなったシャイのグラスを握りながら見つめ、ぼーっと考え事をしていた。ぼんやりしている佐知子に気づいたヨウが声をかける。
「ああ! えっと……ノーラさんに……もう会いに行ってもいいかなぁ……って考えてて」
佐知子は慌てて答える。
「ああ……あの世話した難民の親子か」
「うん」
佐知子はシャイのグラスを置く。
「落ち着いたら遊びに来てねって言われたんだけど……もう落ち着いたのか、本当に遊びに行っていいのか……何か悩みつつ一週間ってまだ早いかなーとか更に色々考えちゃって……アーマ宿舎の場所も知らないし……」
少し佐知子が俯くと、
「命の恩人に社交辞令なんて使わないでしょー。そんな人なら俺が村から追い出してあげるよ」
セロがあーんと一口サイズのチョコケーキの様なお菓子を頬張りながら物騒なことを言う。
「セロさん!」
そんな事言わないで下さい! っと佐知子が立ち上がると、
「まぁ……社交辞令ではないと思うが……一週間はちょっと早い気もするが……まぁ、明後日にでも行ってみたらいいんじゃないのか? 明後日はサチコも休みだろ?」
「あ、うん! 休み! そっか……行ってみようかな……」
佐知子が少し嬉しそうにしていると、
「ちなみにアーマ宿舎は正門入った正面の、あのレンガの建物だ。覚えてるだろ?」
その言葉に、佐知子は目を丸くする。
「え! あれ!?」
「そうそう、正門破られたら犠牲はまず難民からってね」
「セロ!」
ヨウがセロに怒鳴る。
「畑に行くのに一番近いからだ!」
「どうかな~?」
ニタニタと笑いながらセロは肘を突いてフォークをくるくると回している。
「セロさん……」
(まぁ、確かにそういうこともあるかもしれないけど……)
現実は残酷だからなぁ……と、今まで見てきたことを思い出しながら佐知子は思う。
「うん! でもとりあえず明後日、行ってみる! あ、でもアーマの人達も仕事してるからいないかな?」
「サッちゃんの休みの日は村の休日だから、アーマの人達も休みだよ。よかったね」
パクリと、またもやケーキの様な物をセロは頬張り、微笑んだ。
「あ! そうか! すっかり忘れてた! よかった!」
安心した佐知子は嬉しそうに微笑んでお菓子を頬張った。
「…………」
そんな佐知子を穏やかな微笑みで、二人は見つめていた。




