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神様の外交官  作者: 山下小枝子
第二部 第一章

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36 ぬくもりを伝えて。

「あの……で、そんなわけで、今ノーラさんの様子見に行ったりしたいので、ノーラさんの事が終わるまで勉強会……お休みにして貰ってもいいでしょうか?」


 佐知子がすまなそうに聞くと、


「えー! もう終わったんじゃないの!?」


 セロが身を乗り出す。


「いや……まだ息子さん入院してますし……看護婦さんとの通訳とかしないといけないので……」


 えーえー! とセロは椅子の上で揺れてふくれている。


「……行ってやれ……アーマ宿舎に入るまで世話してやるといい……」


 勉強は落ち着けばまた出来るだろう……と、ヨウはほほえんでシャイをすする。


「……仕方ないなぁ」


 セロもしぶしぶ承知した。


「ありがとうございます! ありがとう、ヨウ」


 佐知子はヨウにほほえみかける。ヨウは横目で見ていた視線を泳がせながら伏せた。


 気まずかった佐知子とヨウの雰囲気も元に戻り、勉強会を黙って欠席した理由も説明し、その後は色々とノーラやアーマやズハンの事などを話し、夜も更けたので夜のお茶会はお開きになった。


「サチコ……送ってく……」


 セロの部屋を出るとヨウにそう言われ、佐知子は少し驚く。


「え、いいよ! こんな距離近いし、すぐそこだし」


 手を振る佐知子。


「いや……心配だから……」


 ヨウは顔を伏せる……。


「…………」


 佐知子はお茶会で少し忘れていたが、今日のヨウにかけた心配を思い出す。そして少し俯く。


「じゃあ、お願いしよっかな」


 そして顔を上げてほほえんだ。


「あ、ああ……」

「手繋いで行こうか?」

「は!?」


 佐知子の突然の提案に、ヨウは大きな声を出してしまい、白い廊下にヨウの声が反響する。佐知子は、ふふふと笑う。


「手繋いで行こう。はい、手貸して」


 佐知子は左手を差し出した。


「え、な、いや……」

「ほら、早く!」


 佐知子は自らヨウの右手を取った。

 自分でもどきどきしていたが、小さな子を……弟をあやす様な気分でいた。


 きっと今のヨウは不安で一杯なのだろう。だから最後まで……使用人小屋まで一緒にいたいのだ。だからもっと不安を失くしてあげられる方法を……ぬくもりを伝えてあげようと思った。


 私はちゃんとここにいるよ。


 と、触れて、手の平越しに体温、肌の感覚で自分を感じさせてあげられれば、不安は大分和らぐと思ったのだ。


「はい、行こう!」


 そして平静を装い佐知子は歩き出す。内心どきどきとしているが……。

 短い距離をゆっくりと、二人は手を繋ぎながら歩き出した。

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