33 ずぶ濡れヨウ。
「夜店でバラヴァ売ってた! ラッキー! これは今日頑張った俺へのご褒美だね!」
一人でセロの研究室でぼーっと待っていた佐知子の元へ、バターン! と、大きな音を立て扉を開きセロが戻って来た。
片手には皿に乗ったたくさんのバラヴァを持ち、満面の笑みで嬉しそうなセロ。そして、よっと。と言いながら床に置いていた、いつもヨウが持ってくるシャイの銀の携帯器を持ち、足で扉を閉めた。
「さー、食べよ食べよ」
セロはテーブルの上にシャイとバラヴァをセッティングしていく。
「あの……セロさん、まだヨウが来てませんけど……」
おずおずと佐知子が問うと、
「あー、いいよ、いいよ!」
ぶっきらぼうにセロは返す。
「セロさん!」
もう! と、佐知子は心の中で叫んだ。
「俺がどうしたって……」
すると扉を開き、ヨウがやってきた。
「あ、ちょうど来た来た。これならサッちゃんもいいでしょ?」
テキパキと、セロはシャイを淹れる。
「はい……」
ほっとする佐知子。
「何の話だ?」
佐知子の隣に座ったヨウ。ヨウからはいつものいい香りがした。しかし、
「ヨウ……髪、濡れてない? まさか水浴びたの? こんな気温で!」
佐知子は思わず大声を出した。
「え……ああ」
ヨウは気まずそうに視線を合わせず、少し俯いて答えた。
「体拭くだけで良かったのに! 風邪引いちゃうよ!! 何考えてるの!? そんなに汗臭くないよ!!」
立ち上がりながら佐知子がまくし立てると
「…………」
二人のやり取りを見ていたセロは吹き出す。
「あっはっは! サッちゃん、お母さんみたい! 叱られてやんの!」
笑っているセロにヨウが、
「うるさい……」
睨む。
「おか……もう! タオルある? 髪拭いて早く乾かしな? あったかいシャイ飲んで!」
心配そうな表情で佐知子は自分のシャイをヨウの前に出す。
「ふふふ……」
セロはまだ小さく笑っていた。




