31 気まずい二人とセロ。
ヨウの問いに佐知子が答えられないでいると……
「あー!! やっぱり帰って来てた!! 声がすると思ったら! 早く俺に声かけてよー!」
使用人小屋の入口から布をよけセロが顔を覗かせた。
「あ、セロさん……」
「ん? 何? どうしたの? ヨウ、よかったねー! サッちゃん、元の世界に帰ってなかったよー!」
「……ああ」
ヨウは馬を撫でながら答える。
「ん? 何? 何かあったの? サッちゃん、ちゃんといたのに」
場の空気にセロはきょろきょろと二人を見る。
「いえ……別に……」
俯きながら佐知子は答えた。
「ヨウ、もっと喜びなよー! ちゃんといたんだから! あんなに必死に探してたのに!」
セロがヨウの所へ行き、肘で小突く。
「うるさい……」
「もー! なんなんだよー!! 俺、こんなに協力したのにー! 今日の仕事ほとんどしてないんだからねー!」
その言葉に佐知子は焦る。
「え……す、すみません!」
そして頭を下げた。
「仕事しないのはいつものことだろ……サチ、気にするな」
謝罪する佐知子にヨウは言った。
「してるよ! 大体、今日はヨウがほっといたら一日中探し回りそうだったから協力したんだからね! まったくサッちゃんのことになると……」
「うるさい! ほらもう帰るぞ! サチもいたんだから!」
セロの言葉にヨウは少し焦りながらセロの腕を取り、馬へと向かう。
「あ、あの!」
そんな二人に佐知子は声をかけた。




