25 施しを受ける者。
その後、女性役人の通訳をし、何回かすれば聞く事は毎回同じことで、次の人になる度に、佐知子は言葉の事で同じことを難民の人に言われ、そして通訳をし、淡々と列は進み十人以上を終えたころ……
「あ! ノーラさん!」
「サチコ!」
ノーラの番が回ってきた。
「よかったです! 今日中に間に合いましたね!」
「ええ、あなたのおかげよ。何だか不思議だけど……あなた凄いのね」
「あはは……」
ノーラの言葉に、佐知子は笑うしかなかった。
「さっき言ってた知り合いの方?」
役人の女性にそう問われる。
「はい! 今日中にこの方の手続き済ませたくて通訳申し出たんです」
「そう、じゃあ早く済ませましょう。お名前は? 通訳して」
「あ、はい」
国事部の人の淡々と冷たいような、無駄なく仕事をこなす所は未だに慣れない佐知子。
佐知子はノーラの言葉を通訳しながら手続きを済ます。これが終われば帰れるや~と、思いながら通訳し、
「はい、これ書類ね。失くさないように」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。と、言っています」
と、無事ノーラの手続きはすんだ。
そこでふと、佐知子は気になっていたことを役人の女性に聞いてみた。
「あ、あの……今更なんですけど、アーマってどういう意味なんですか?」
「え?」
今更? という怪訝な表情をする女性。
「す、すみません……」
佐知子は謝る。
「別に謝らなくてもいいけど……アーマっていうのは『施しを受ける者』っていう意味よ。古代アズラク語らしいわ。昔からのアズラク帝国の風習で、こういうことが行われているらしいわ。だからハーシム長官がうちの村でもやりだしたらしいの……」
役人の女性は、まぁ、そのおかげで結構うちの課は大変なんだけどね……とつぶやく。
「そうなんですか……」
(施しを受ける者……)
アズラク帝国の昔からの風習……アズラク帝国……この村に戦をしかけてきたりするけど……結構いい国なのではないだろうか……どんな国なんだろう……と、佐知子はぼんやりと思った。




